ベストセラー『がんばらない』著者の鎌田實氏は、長野県の諏訪中央病院の名誉院長でもある。チェルノブイリの子供たちへの医療支援に取り組む傍ら、原発の避難対象地域にも通っている鎌田氏が、福島第一原発事故収拾を手伝う『福島原発暴発阻止行動プロジェクト』たちの活動をリポートする。同団体の理事および副理事は、いずれもかつて学園闘争に加わった経験の持ち主だ。
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僕は許可を得て、20km圏内に入ったことがある。土木作業員の健康管理が目的だった。作業員たちは瓦礫の撤去をしながら、遺体の捜索をしていた。熱中症になりそうな状態の中で精神的にも辛い仕事だ。僕は、土木関係者は談合体質だからずっと嫌ってきたが、頭が下がる思いだった。警察も自衛隊もスゴい。
国家の一大事になると右側の人の力のスゴさを見せつけられるが、左側の人は文句をいうだけだと思っていた。しかし60年安保の世代が立ち上がった。ちょっと嬉しい。
こういう活動は政府の責任をあいまいにしてしまうので手助けは必要ないという批判もあるが、これは典型的な「崩れ左翼の考え方です」と『福島原発行動隊』の副理事・平井吉夫さんは笑う。
元仲間の医師からは「老人は死んでもいいという考え方になる。とんでもない」と叱られたというが、250ミリシーベルトまでは、許されるからといって原発作業員ばかりには任せられない。もっと少ない被ばく量でとめてあげるべき。そのためには、できるだけ大勢が応援すべきだと主張する。
批判や文句を言う前に、瓦礫の撤去や原発内での線量測定、場合によっては、20km圏内での線量測定も担当してもよいという。穴を掘って、高汚染の瓦礫を埋めるだけでも、原発作業員や土木作業員の被ばくを軽減できるから、それも行なう。
行動隊の中にはシェフたちもいる。作業員たちの健康管理をし、おいしいものを食べることができたら、ミスも減り、成果が上がるだろう。この世代はチームワークの大切さを知っている。
実際に科学的なデータも揃い、高齢者のほうが子どもに比べて放射線の影響による遺伝子損傷を受けにくいともいわれている。いまそこにある危機のために立ち上がってくれた老齢パワー。右と左という冷戦の時代は終わった。それぞれの思想の差なんてどうせほんのわずか。ちょい右も、ちょい左も、3.11の体験を通してこの国を守りたいという思いがつのり出している。一つになって危機を乗り越えられたら、こんなにハッピーなことはない。
※週刊ポスト2011年8月19・26日号