<想定外だった、想定外だったってみんな口をそろえて言うけど、原発は事故った時 甚大な被害がでるから、「想定外」はあってはならないと思うんですケド…私、言ってること間違ってますかね…。>
東日本大震災による原発事故直後、ブログでこんな文章を綴ったのは、兵庫県在住の現役中学3年生アイドル・藤波心(14)。原発批判、放射能への恐怖、報道や政府発表への疑問…中学生とは思えない鋭い指摘は話題を呼び、ソフトバンク社長の孫正義氏もツイッターで絶賛した。ブログには賛否両論1万3千件以上のコメントが殺到したが、いまも自らの意見を展開し続けている。表情にはまだあどけなさの残る彼女だが、こうした活動を続ける思いとは?
――震災当日のことから教えてください。
藤波:学校から帰ってくると、家族がテレビの映像に見入ってたんです。それは津波の映像で、そのときは映画じゃないかと思ったほどでした。家族で、涙ながらにその映像を見ました。でも、翌日、塾の友達にその話をすると「地震や原発のニュースばかりでつまらない。早くドラマやバラエティー番組が見れたらいいよね」って。そんな答えが返ってくるなんて想像もしてなかったので、その温度差にすごくショックを受けました。
――兵庫ではかつて阪神・淡路大震災があった。それでもそのような反応だった?
藤波:私たちの世代って阪神・淡路大震災を経験していなくって。私も震災から1年半後ぐらいに生まれたんですね。両親や周りの人からは聞いていましたけど、関心が薄れてしまっていたのかもしれません。それはよくないことだと思うんですが…。
――原発事故では報道や政府の発表への疑問はかなりあった?
藤波:事故の後、CSで海外のニュースを見ていると「危険です。安全ではありません。早く逃げてください」って呼びかけてるのに、日本のニュースや政府の記者会見では、「ただちに影響はありません」とか、「安全です」「大丈夫です」って連呼している。当時、私は原発のことなんて全然知らなかったので、どっちのいっていることが正しいのかわからなくて、自分でインターネットでいろいろ調べてみて、やっぱり危険なんじゃないかなと思って。いつもブログ見てくれてる人が、どんな意見を持ってるのか聞いてみたかったのと、あと、私の意見を聞いてもらいたいなと思ってブログで書きました。
――そのときに持った意見は、いまでも変わっていない?
藤波:はい。できれば、いますぐすべての原発をとめてほしいというのが正直な気持ちです。ただ、いろいろ勉強して、原発を廃炉にしたとしても何年か冷やしたりしなければいけないとか、いますぐすべてなくすことは難しいということを知りました。でも、時間はかかると思うんですけど、自然エネルギーとか本当の意味でクリーンなエネルギーに移行していってほしいなと思っています。
――ブログで書いてから学校などでの反応は?
藤波:仲のよかった友達が、私のブログを見てから、腫れ物に触れるような感じで、避けられるというか、しゃべらなくなっちゃったりもしました。それはとてもショックなことで、いつも仲よく笑い話をしていたような友達でも、大事な問題を一緒に考えていけるというわけではないんだなということを感じました。
――逆に、応援してくれる人もいたのでは?
藤波:「ブログ見たよ」って、それまであまりしゃべったことなかった子が話しかけてきてくれて、応援するっていってくれて、友達になりました。ブログでも、どこかの学校の先生から「道徳の授業で、資料としてブログの記事を使わせてもらいました」とか、生徒さんから「授業でブログの記事が資料として配られました」というコメントをいただきました。あのブログもみんなで話し合うきっかけになってほしくて書いたので、それを見ると励みになります。
――“脱原発のジャンヌ・ダルク”と呼ばれていますが?
藤波:自分でいっているわけじゃないですよ(笑い)。じつは、ジャンヌ・ダルクのことをよく知らなくて、どんな人なのかと調べてみたんです。そしたら、最期は処刑されたと書いてあって、なんだか複雑な気持ちです(笑い)。
【藤波心(ふじなみ・こころ)】
1996年11月22日、兵庫県生まれ。特技は歌うこと、ダンス、ポージング。ファッションショーのモデルをきっかけに、現在の事務所に所属。グラビアや映画などで活躍。今年5月、『間違ってますか? 私だけですか? 14才のココロ』(徳間書店)を出版。
撮影■田中麻以