記録的な円高に伴い、政府・日銀は大規模な市場介入を行った。しかし、東京新聞・中日新聞論説副主幹の長谷川幸洋氏は、「介入はほとんど意味がない」と指摘する。
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為替が円高に振れても、政府にできることはあまりない。新聞は円高になると、すぐ「政府・日銀は市場介入をためらうな」とか書くが、実は介入はほとんど効果がないのだ。なぜかというと、為替取引の総額に比べて介入は圧倒的に規模が小さいからだ。
国際決済銀行(BIS)の統計だと、1日当たりの為替取引は世界全体で5.1兆ドル(2010年4月)。これに対して政府の介入は、たとえば8月4日の円売りドル買い介入で4兆5000億円(600億ドル弱)だった。すなわち1%強にすぎない。これでは流れを変えるのに、まったく力不足だ。
市場参加者がどっちに動こうかと迷っているとき、各国が一斉に介入すれば、数日から1週間程度の効果を持つことはある。だが大勢に逆らって日本が単独で介入しても、今回のように効果はない。ミスター円と呼ばれた榊原英資元財務官(青山学院大学教授)もそう認めている。
※週刊ポスト2011年9月2日号