近所トラブルは今も昔も全国各地で発生しているが、いまここで、1988年の近所トラブルを振り返ってみよう。高級マンションでベランダ農園を始めて近隣に迷惑がられていた東京・杉並区のKさん(24才)のお困りエピソードを紹介する。(女性セブン1988年6月30日号より)
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「人間は自然に近い生活がいちばん幸せだと思う」というのが、Kさんの主張だ。
「マンションは犬猫を飼っちゃいけないけど、観葉植物ならOKでしょ。ベランダが広いってことは、お庭があるのと同じだわ」と、ベランダ農園を始めてしまった。
「トマトときゅうりとなすとピーマン。肥料は自然のものがいちばんいいのよ。水もね、雨が降るように、上から降りそそぐっていうのが正解」
しかし、付近の住人はたまったものではない。まず階下の奥さんが悲鳴をあげた。
Kさんのかけた水が、階下に干してあったふとんにかかったのである。“雨と同じように”ホースの先を振りまわして水やりをしていたからだ。
次に怒ったのは、Kさん家の部屋の左右の住人。肥料の臭いで食欲がなくなってしまったのである。何度か話し合いがもたれたが、Kさんは「自然のままがどうしていけないの!」といって、一歩も引かないのだ。
Kさんの強硬な態度に、同じマンションの住民のあいだでは、“Kさん夫妻に転居を求める署名”という物騒なものまで始まってしまった。だが彼女は、アフリカへ長期出張中の夫(31才)を、この部屋で待つと頑張っている。