ある国交省幹部はこう言う。
「全日空がいよいよ本気になってJALの追い落としに動き始めたと見ていいだろう」
去る7月21日、全日空はアジア最大手の格安航空会社(LCC)のエアアジアと共同出資をする形で、新たにLCCを設立すると正式に発表した。この新しいLCCの社名は「エアアジア・ジャパン」で、この8月中にも設立される見通しだ。
全日空は関西空港を拠点とするLCC、「ピーチ・アビエーション」(来年3月から運航開始予定)を既に立ち上げているが、今回の新LCC設立はそれに次いで2社目となる。
全日空関係者が言う。
「ピーチ社に対する我が社の出資比率は33.4%にとどまり、必ずしも全日空の思い通りになるとは限らない。これに対して新LCCの我が社の出資比率は67%に達し、全日空の完全なコントロール下に入る。だからこそ新LCCを設立したのだ」
エアアジア・ジャパンは成田空港を拠点に就航し、注目される運賃について、伊東信一郎・全日空社長は「既存の航空会社の半額から3分の1程度」との方向を示す。
国交省幹部はこう話す。
「新LCCが、JALやLCC色を強めつつあるスカイマークを狙い撃ちにしたものであることは確実だ。伊東社長が言うような料金体系で全日空が本気でLCCを展開したら、国際線への進出を狙うスカイマークは防戦一方だろうし、経営再建途上にあるJALの先行きもとたんに怪しくなってくる」
注目すべきは、新LCCが国際線のみならず、積極的に国内線も展開させる方針をとっていることだ。
羽田空港ではなく、成田空港が拠点となるというハンディはあるにせよ、東京~大阪間2000円台も視野に入れているという。これでは、既存航空会社各社にとっては戦々恐々といったところだろう。
新LCC、間違いなく“台風の目”となりそうだ。
※SAPIO2011年8月17日・24日号