木内幸男氏といえば常総学院前監督で甲子園通算40勝の名将。今年、県大会決勝で敗退すると惜しまれつつユニフォームを脱いだ。がん闘病のさなか、木内氏が高校野球に対する思いを激白した。
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あるシニアチームの監督は、13人中10人を強豪高校に送りこんだと自慢してた。でも、そんなにいるわけねぇ。多くて3人。その3人をとるためにチームに配慮してか、他の10人まで特待生だろ。高校入学前から過大評価された子はどうなる? 余計なプレッシャーを感じてしまうわなぁ。
うちの野球部も、体験入部というのをやっていてね。80~90人近くの中学生が集まって、そのうち7~8人は凄い選手です。たださぁ、俺は父兄に言うんだよ。
「皆、特待生で入学させたいと思っているんでしょ」と。そりゃ無理だよ。うちは特待生にしたいような選手でも、受験で1点でも足りないと不合格にしちゃう。スカウトして強くなったと思われるのがシャクだから。
だけど親は、「特待生でないとうちの子のプライドが許さない」と言う。高校野球はそういう時代になっちゃったんだよ。
そりゃ選手を集めて甲子園に出ることで学校経営が成り立ってる現実を考えると、それも“必要悪”と思う自分もかつてはあった。でも一人の選手を優遇すると、一般受験した子が一人落ちるわけだ。おかしいべぇ。
俺が政治家とくっつかなかった理由もそこにある。取手二高時代はグラウンドを県に直してもらうのに10年かかった。政治家に頼めば2年で修繕してくれるのにね。ところが政治家に頼むと、次は支援者の師弟を部にいれてくれ、レギュラーを与えてほしいとなる。
純粋に野球を楽しめない、頑張った子が損するようなことになりたくないんだぁ。いざ、引退してみて確信が持てたな。俺は高校野球が本当の競技から離れていくのが嫌だったんだなぁと。
※週刊ポスト2011年9月2日号