日立製作所と三菱重工業の経営統合は、日本経済新聞が報道するも、その後、両社が否定し「おじゃん」となった。だが、巨大企業同士の合併が必要だと語るのは、大前研一氏だ。
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世界的な合従連衡は、半導体、自動車、航空機、薬品など様々な業界で進行し、多くの分野で有力企業は巨大な2~3社に集約されている。グローバル・メガマージャー時代には、市場の「分母」は国内ではなく世界で考えなければならない。
ところが日本企業の場合は、国内の市場規模がそれなりに大きく、とりあえず国内だけでも何とか食べていけるため、思い切って世界に打って出ることをせずに国内でのうのうとしているケースが少なくない。しかし、それらの企業の収益性は極めて低い。
どの業界でも欧米の同業他社に比べ、利益率は4分の1~5分の1、極端な場合は10分の1程度である。国内にライバルが多く競争が激しいからで、そのため今となっては海外に出る体力もないという状況になっている。
重工業の分野も、すでに世界のライバルは巨大化している。たとえば鉄道車両の世界的な有力企業は、カナダのボンバルディア、フランスのアルストム、ドイツのシーメンスくらいしかない。かたや日本は国内だけで日立、東急車輛製造、川崎重工業、日本車輛製造、近畿車輛などがしのぎを削っている。だから海外で受注しようとすると、技術力はあっても価格競争力がなくて苦戦している。
つまり、これから日本の重工業分野は国内市場が伸びない以上、国際競争力を高めるために大企業の統合が不可欠なのである。まだ日本には重工業分野の企業が大小含め数多く残っているが、それらを全部一つにまとめて「全日本重工業株式会社」を作るべきだ。
鉄道車両メーカーも、統合を進めて「日本鉄道車両株式会社」となり、海外市場で勝負するしかない。そうすることで世界シェアを拡大して利益率を高めないと、グローバル市場で世界の巨大企業と渡り合うことはできないのだ。ドイツやフランスはとっくに「国内1社体制」に移行している。
※週刊ポスト2011年9月16・23日号