原発と核――。この問題に対して沈黙を守る政界において、唯一、持論を展開しているのが、自民党の石破茂政調会長である。核兵器を持つべきではないが、「核の潜在的抑止力」を維持するためには原発をやめるべきではないと主張する石破氏にその真意を聞いた。
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――2つ疑問があるのですが、まず1つ目は、核攻撃するとすぐに核の報復をされるから怖くて使えないというのが核抑止力であるとすると、半年とか1年経ってから核兵器を作れる能力を持っていても意味がないとの指摘があります。いかがですか。
石破:だからこそ「潜在的抑止力」なんです。核の基礎研究から始めれば、実際に核を持つまで5年や10年かかる。しかし、原発の技術があることで、数か月から1年といった比較的短期間で核を持ちうる。加えて我が国は世界有数のロケット技術を持っている。この2つを組み合わせれば、かなり短い期間で効果的な核保有を現実化できる。そして、こうした潜在的抑止力は米国の「核の傘」の信頼の下にある。
――2つ目に、核を持つといっても、1個では意味がない。安全保障上必要な核兵器の数はどれくらいですか。
石破:確かにオブジェのように1個だけ持っていても意味がないが、米国やロシアと同じように何千と持つ必要もない。核兵器は「使わないことに意義がある」兵器であり、いたずらに多く持てばいいというものではない。
参考になるのは、英国やフランスの核政策でしょう。これらの国々が数量的に少ない核兵器をなぜ持っているのか。ド・ゴール(元大統領)がなぜ核保有にこだわったのか。大国フランスのプライドでもあるだろうし、米国の「核の傘」を全面的に信頼しているわけでもないのだろう。
私はいずれ、時間ができたら英国やフランスの核政策について徹底して研究したいと思っている。いずれにしても、核保有国は、自国の生存のために必要だと政策的に判断したからこそ核を保有している。これを理解しないまま、「非核三原則」のもとで安易な思考停止に陥ることは、わが国の存立を危うくすることになりかねません。
――(核武装を決断して)NPT(核拡散防止条約)を脱退すると、核燃料が止められてしまい、原発も動かせません。結局は、「核か原発か」の二者択一になってしまうのでは?
石破:それは今後の「原発」のあり方にもよるでしょう。わが国は核燃料というフロントエンドは外国に頼り、バックエンドたる核サイクルも未だ展望が見えていないため、そのような二者択一になる。だから、今までのところ「絶対に軍事利用しない」という条件の下で、IAEA(国際原子力機関)の厳格な査察を受け入れながら原発を進めてきた。日本の核抑止力が「潜在的」である所以です。
※SAPIO2011年10月5日号