芸能

大沢逸美 華やかな舞台の裏側で11年にわたる壮絶介護の過去

女優業と共に介護に関する講演活動も行なう大沢逸美さん

 1982年第7回ホリプロタレントスカウトキャラバンでグランプリを受賞し、翌年にはレコード大賞新人賞を受賞。ボーイッシュな魅力で輝いていたアイドルの大沢逸美さん(45)。20代後半からはセクシーなレビューや舞台などにも活躍の幅を広げる一方、その頃から11年もの間、家族の介護をしながら仕事をしていた。

 デビューから7年後に父親を突然のがんで亡くしただけでなく、母親の幸子さんも糖尿病、白内障による視力低下、聴力の極度低下、リウマチ性関節炎、そしてがん――と、次々と病に襲われたのだ。

 現在は女優業と両立しつつ、介護経験に基づいた著書『お母さん、ごめんね』を執筆し、講演活動なども行なっている大沢さんに、自身の経験やこれから介護をする可能性がある人へのアドバイスを聞いた。

「『母の世話は娘の私にしかできない』とがむしゃらでしたが、今思えば共倒れになる寸前でした。介護をがんばり過ぎている時って、本人はそのことに気づけないんです」(大沢さん・以下「 」内同)

 アイドルからの脱皮に成功し、仕事の幅も広がっていた30代前半には、名古屋の舞台に出ながら、母親をお風呂に入れるためだけに東京の自宅へ戻り、とんぼ帰りしたこともある。

「私は悪い例なんです。若くて体力があったからなんとかやっていたけれど、一般的にはもう少し上の年代で介護される方が多いですよね。それに母の目線で考えられなかったことが、いっぱいあるんです。

 母が入院中のある日、母の寝床に入ってみたら氷のように冷めたかった。布団や電気毛布などで快適と思っていたけど、部屋にすきま風が入っていて……。母の『寒い、寒い』という言葉を、『また口ぐせか』と聞き流し、きちんと受け止めていなかった自分の心なさに背筋がゾッとしました」

 身内である家族だからこその介護の良さはある。しかし家族だけの介護では限界があり、共倒れしないためには周囲の協力、サービスや介護用品を上手に使うことが必要と大沢さんは振り返る。

 当時は介護サービスもまだ充実しておらず、リウマチなどで動きが不自由なだけでなく、話すことはできても目や耳の機能が低下していた幸子さんにとって、大沢さんが仕事に出ている間はベッドの傍らに置いた電話機が命綱。手探りでも操作できるよう、短縮の1番は119番、2番は大沢さんの事務所、3番に大沢さんの携帯番号が入っていた。

「私に電話がないことは無事の証でした。しかし実際には何度救急車を呼んだことか……。

 最近はセンサーが感知して無事がわかったり、緊急ブザー付きの介護道具なども出てきています。“あのとき、これがあったら”と思うこともありますね」

 離れて暮らす家族だけではなく、大沢さんのような同居のケースでも、家を空けている時間帯への「見守り」ニーズは高い。こうしたツールの最新機器、2011年9月9日にauから発売された「Mi-Look(ミルック)」は屋外では歩数計との連動で活動量を、家の中では人感センサーで人が通った回数をメールで送るほか、ブザーを鳴らすと緊急連絡として位置情報がメールで届く。そういったツールや介護サービスの情報には、今現在介護をしていない人にも、意識してもらいたいと大沢さんはいう。

「いざ、介護が必要になったときには、目の前のことに追われてしまい情報収集をする時間がほとんどありません。“今はまだ”と思っている時から、少しずつ情報を集めておくといいですね。

 プロの技術やツールを上手に使いながら、家族ならではの愛情を100%注げる介護が理想です。これから介護をする人には、私みたいな苦労はして欲しくないですから」

関連キーワード

関連記事

トピックス

田村瑠奈被告(右)と父の修被告
「ハイターで指紋は消せる?」田村瑠奈被告(30)の父が公判で語った「漂白剤の使い道」【ススキノ首切断事件裁判】
週刊ポスト
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
暴力団幹部たちが熱心に取り組む若見えの工夫 ネイルサロンに通い、にんにく注射も 「プラセンタ注射はみんな打ってる」
NEWSポストセブン
10月には10年ぶりとなるオリジナルアルバム『Precious Days』をリリースした竹内まりや
《結婚42周年》竹内まりや、夫・山下達郎とのあまりにも深い絆 「結婚は今世で12回目」夫婦の結びつきは“魂レベル”
女性セブン
騒動の発端となっているイギリス人女性(SNSより)
「父親と息子の両方と…」「タダで行為できます」で世界を騒がすイギリス人女性(25)の生い立ち 過激配信をサポートする元夫の存在
NEWSポストセブン
宇宙飛行士で京都大学大学院総合生存学館(思修館)特定教授の土井隆雄氏
《アポロ11号月面着陸から55年》宇宙飛行士・土井隆雄さんが語る、人類が再び月を目指す意義 「地球の外に活動領域を広げていくことは、人類の進歩にとって必然」
週刊ポスト
九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
佐々木朗希のメジャーでの活躍は待ち遠しいが……(時事通信フォト)
【ロッテファンの怒りに球団が回答】佐々木朗希のポスティング発表翌日の“自動課金”物議を醸す「ファンクラブ継続更新締め切り」騒動にどう答えるか
NEWSポストセブン
越前谷真将(まさよし)容疑者(49)
《“顔面ヘビタトゥー男”がコンビニ強盗》「割と優しい」「穏やかな人」近隣住民が明かした容疑者の素顔、朝の挨拶は「おあようございあす」
NEWSポストセブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン