最近アジア各国の新興市場の人気が高まってきた。特に、インドネシア、タイ、フィリピンといった株の注目度は高い。今後、アジア地域への投資を考える個人投資家もいちだんと増えてくるだろう。そこで、注目したいのがベトナム株だ。新興国株式に詳しい日本アジア証券の今井正之氏が解説する。
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ベトナムの産業構造は確実に変化している。GDPの産業別構成比率の推移を見ても、2002年以降、最も比率が高いのは農業から製造業となり、現在では製造業が全体の約25%を占めるまでになった。
この変化の主因は、日本を含む海外企業がベトナムを生産・販売拠点として、積極的な進出を果たしたことだ。日系企業は、2010年12月時点でキヤノン、パナソニック、ホンダなど940社がベトナムに進出している。しかも、まだ中国の内陸部と比べても人件費などのコスト面で優位にあるため、ベトナム経済は中国からの生産拠点のシフトなどで成長する段階が続いている。
ベトナム経済のアキレス腱ともいえる貿易赤字は、対中貿易で発生する構造的な問題といえる。ベトナムの産業構造が、製品の一貫生産が出来ず、半製品や完成部品を中国から輸入し、組立て後に輸出するという図式になっていることが原因だが、生産・販売拠点の中国からのシフトによって、この図式は改善していくだろう。今後は、中国という巨大な消費マーケットが隣国に位置するというメリットの方が大きくなるに違いない。
また、新興国としてのベトナムを、より大きな視点で眺めると、現時点は日本の1960年代中ごろ、中国の2000年初頭に該当すると考えられる。ベトナムの1人当たり年間GDPが1000ドルを突破したのが2008年で、日本は1966年、中国は2001年だからだ。
かつての日本株、中国株の場合も、その段階で購入した多くの投資家は、後に大きな利益を得ることとなった。同様の事が、今後のベトナム株にも起こると見ている。
※マネーポスト2011年9月号