シュートをはずしまくりながら、何とか2-0でマレーシアに勝利したサッカー男子のU-22日本代表。そこには、「なでしこジャパン」と比べ、決定的に欠落しているものが……。作家で五感生活研究所の山下柚実氏が指摘する。
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21日に行われたサッカー男子、オリンピック予選。対マレーシア戦では、相手の守備に阻まれ、何本シュートを打っても枠からはずれる。相手にカウンター攻撃をしかけられ、ひやっ。もしかしたら「1-1」で引き分けかと心配した人も多かったのでは。
後半にやっと2点目をゲットして、勝利。日本人の悪いくせで、「勝ってよかったねムード」に流れ、サッカー解説者もまずは白星を評価。しかし、何とも消化不良感の残る試合でした。
サッカーにさして詳しくない私でさえ、「オリンピック予選の日本代表チームがこんな試合でいいのかな」と、考えさせられてしまったのです。どうしようもない後味の悪さは、いったいどこから来ているのでしょう?
「大量点を取りに行く」と自信満々で試合に臨んだ選手たち。たしかにボール支配率は日本68%と圧倒し、26本ものシュートを放った。しかし、点数は2点のみ。
もちろんサッカーの試合で「2-0」のスコアはよくあることだし、見応えのある試合もしばしば。つまり、納得できない問題点は、「取った点数」ではなく、別のところにあったのでは。
はた、と思い当たったこと。それは、ゴールをはずした時の、選手の表情です。「あっ、失敗しちゃった」という、どこかお軽くてゆるい表情。ちょっと格好つけてやってみたヒールパスが、「はずれちゃったよ」という、何かちゃらついた感じ。そんな選手が、間違いなく何人かいるのでは。
サッカーに限らず、迫真に満ちた人の気力の表情や雰囲気というものは、不思議とテレビ画面を介して、瞬時に正確に、伝わってきます。「表情」というものが、動物が生き延びるために鋭く察知すべき「情報」だからでしょう。人間も動物である以上、相手がどんな状態でいるかを読み取る能力が備わっているのです。
日本を代表してオリンピック予選に出ているU-22の選手から、「ゆるさ」を感じとってしまう。なぜ、なでしこのような「気力のほとばしり」が感じられない選手が、代表に混じっているのか。不思議です。
高校時代から「うまい」と褒められ、エリート選手としてチヤホヤされ、鳴り物入りでプロになった「スター選手」だから?
ちゃらついた雰囲気が、もし、チーム全体に伝染するとすれば……このチームにある種の「ゆるさ」を感じて先行きを危惧している人は、私だけではないはず。「悪貨は良貨を駆逐する」という教訓が杞憂に終わればよいのですが。