昨年来、いくつも譲渡先が浮かんでは消える横浜ベイスターズの売却話。相変わらず今年も交渉は難航している。5日には、最有力とされていた「モバゲー」の運営会社・DeNAとの交渉打ち切りが報じられた。
当初はこのDeNAに加え、旅行代理店のH.I.S.の名前も浮上するなど、身売り計画は二転三転した。だが結局進展はなく、現在の親会社であるTBSホールディングス・石原俊爾社長が、「(交渉がまとまらない場合は)来年もウチが持つ」と消極的な発言をし始めている。大洋時代から応援し続けているという50代の男性が憤る。
「TBSが売却するのは勝手だが、中途半端なことをしないでさっさと決着してほしい。確かに“横浜高校の方が強い”なんて野次が飛ぶほど、最近のベイスターズはひどいよ。それでもファンが見捨てないのは、球団が横浜に根付いているからなんだ」
こうした声が届いたのか、本誌はDeNAなどとは別に水面下で「新たな買収計画」が進められているとの情報を得た。しかも1社ではなく複数で、「横浜に根付いている」というファンの希望にも沿う、「地元財界が共同出資して球団を買収し、市民球団化する案」だというのだ。ある横浜財界の重鎮が明かす。
「参画するといわれているのは、昨年にも譲渡先として名前が挙がった家電量販店のノジマ、シウマイで有名な崎陽軒。他にも、横浜に拠点を持つ複数の会社の名前が挙がっているほか、市民からの出資を募る案も検討されている」
地元球団の危機は地元が救う―何とも美しい話ではないか。早速、名前が挙がった2社に取材した。まずはノジマ。取材に応じた総務グループは、
「当社は何も動いておりません。会社としては公式な発表もしておりません」
と慎重な回答を寄せたが、今年6月には同社の野島廣司社長がスポーツ紙の取材に対し、
「(球団経営の)情熱はずっと持っていますし、今年に入っても(TBS側に)ずっと言い続けている」
と語っている。総務グループは「社長のコメントは把握していない」と回答するものの、野島社長は昨年時点で球団名を「横浜ノジマベイスターズ」とするとの私案も発表しているなどノリノリなだけに、「鶴の一声」という可能性もある。崎陽軒はこう語る。
「最近、市民球団に参加するのでは、というご質問を多数いただくのは事実です。実は先日も、ある新聞社による社長へのインタビューで同様の質問がありました。現状ではお答えすることがないとしかいえないのですが……」(マーケティング部)
市民球団になる場合、ネーミングライツは1社独占というわけにはいかないだろうが、同社の目玉商品「シウマイ」なら、むしろ横浜色が強くなっていい。前出のオールドファンは、「シウマイズ? 強くはなさそうだけど、横浜っぽくていいんじゃないか」と、まんざらでもなさそうだった。
※週刊ポスト2011年10月21日号