今年5月に発生した『焼肉酒家えびす』の集団食中毒事件を受け、10月1日から生食用牛肉の新しい衛生基準が施行された。対象となるのは「ユッケ」「牛刺し」「牛タタキ」など。
店側は業者から加熱処理された肉を仕入れ、表面を削る「トリミング」の後、内側の生の部分を提供することが義務づけられた(違反した場合には営業停止、罰金などが科せられる)。この基準に憤るのは、関西の焼き肉店店主だ。
「今回の規制では焼き加減が“レア”のステーキは対象外なんですわ。レアステーキと牛タタキは何が違うんですか」
そんな声に応えたのか、焼き肉店大手の『叙々苑』が厚労省に噛みついた。今夏、同社が新メニューとして投入したのが、その名も「レアステーキ ユッケ味」。肉の表面を軽く焼いて切ったもので、外見は「牛タタキ」そのもの。だが、これはあくまでも「ステーキ」なので規制の対象外になるという。
これには厚労省も、「その商品は存じ上げております」(食品安全部)と苦笑し、「これはステーキなので問題ありません」とのこと。そこでレアステーキと牛タタキの違いを訊いてみたところ、こう説明した。
「『牛タタキ』は生食用の肉を、『ステーキ』は加熱用を使っている点が異なります」(同前)
ちなみに牛タタキもレアステーキも、食べる時に温かいか冷たいかが異なるのみで、調理法はほとんど変わらず、半生で食べることになるのも同じ。厚労省の理屈なら、生食用の肉を提供するタタキの方が安全な気がするが、それを質すと、
「ステーキでは食中毒の事例が報告されていないから規制から外れました」(同前)と理由を説明した。
※週刊ポスト2011年10月21日号