入学初年度の履修科目である「基礎力リテラシー」として、英語は「アルファベットの書き方・読み方」などのシラバスを公開し、「簡単すぎる」とネット上を中心に話題となった日本橋学館大学。横山幸三・学長(72)が同大学の教育が狙うところを語った。
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本学の「基礎力リテラシー」は、「リメディアル教育」という考えに基づくものです。
「リメディアル教育」とは、学力の低下している学生に、正規の授業やゼミとは別に中学・高校レベルの補習授業を行ない、学び直させるもので、近年は難関大学を含め、実は多くの大学が採用しているのです。
他大学では、就職に備えるため、就職課が高校レベルの試験問題を配布したり、数回の特別授業で済ませたりする付け焼き刃的な内容が多く、基礎学力強化に繋がっているとは思えません。しかし、本学ではシラバスを公表したうえで、単位修得を要する科目として設定しました。
スタートは3年前ですが、実は今年の2月には、案の定、「大学で教える内容か」とのご批判を受けていました。その時には教授会で、「やはり隠したほうがいい」という意見も出ましたが、教えている事実を隠す必要はない。むしろ本学では基礎学力を教えていることを“売り”にしようと決めたのです。
まず、入学時に国語、英語、数学の主要3科目の基礎力テストを実施します。その結果を受けて教員が面談を行ない、必要と判断された学生に受講を促します。
試験で学力を把握することで、「あァ、この子は中学時代の躓きで英語嫌いになったんだな」など、指導教員にも発見があり、適切な履修指導が可能になる。そうして学生と話し合うことで、なぜ英語を一から学ぶ必要があるのかを学生に納得してもらうのです。
当初は教職員にも戸惑いがありました。専門知識を指導すべき大学教員が、アルファベットや小数・分数を教えるのですから当然です。
しかしながら反発はありませんでした。なぜなら、「できない」「分からない」という学生に戸惑っているだけでは何も解決しないからです。2年次以降の高等教育をするためには基礎固めが不可欠だということ、そして今の大学生には基礎学力の指導が必要であるということを、皆が教育者として肌で感じていたのだと思います。
※週刊ポスト2011年10月28日号