「ウリジナル」――ハングルで「我々の」という意味の「ウリ」と、起源を表わす「オリジナル」をくっつけた造語で、要するに「○○は、我が韓国(朝鮮)が起源だ」とする主張を指す。そこには「羅針盤」や「漢字」なども韓国が起源ということになっている。なぜ彼らは「起源」をここまで主張するのか。
国際政治学者の大礒正美氏は、漢字文化の衰退と並び、ウリジナル説を流行らせた背景として注目すべきは「事大主義」から「自大主義」への転換だという。
「朝鮮半島にはもともと、強い中国に従い、他国を蔑視する『事大主義』があった。それが、冷戦が終わって軍事政権から文民政治に移ったこの20年の間に、経済発展も手伝って、ことさら日本をはじめとする外国を馬鹿にする『自大主義』に転じてしまった。ウリジナル問題も、単に反日世論という域を超えています」
確かに、ウリジナル説は世界に活躍の場を広げている。漢字も印刷技術も韓国人が発明したことになっているが、これまた一流の学者や公的機関が大まじめにウリジナル説を唱えている。中国人やグーテンベルクもビックリだろう。
まだまだある。これまた中国起源説が世界で定着している羅針盤は「新羅針盤」が語源でウリジナルとか。「サッカーは我が国発祥のスポーツ」とウェブサイトに掲載した韓国の団体が、世界中から抗議を受けて削除するハメになったという話もある。
人間すら例外ではない。
「モンゴル人は韓国人の末裔である」とする根拠不明の一派によれば、「だから、チンギス・ハーンも韓民族だった」となる。
別の一派は、「イギリス人は韓国人の末裔」と主張している。理由は巨石の遺跡とスコットランドの古語がハングルに似ているからだという。
ついには、「イエス・キリストは韓国人だった」とまで言い出すグループが現われ、さすがにこれは韓国内でもほとんど無視されているが、中国の建国伝説である三皇五帝や、日本の天照大神、ヤマトタケルなどは韓国人だと信じている者が結構いるという。
もっと近年の日本人でいえば、東洲斎写楽や十返舎一九、乃木希典、佐藤栄作・岸信介の兄弟などがウリジナルとされている。
まァ、日本でもチンギス・ハーンは義経だとか、キリストは日本で死んだ、などの珍説は確かにあるが、大きな違いは、それを信じる日本人がほとんどいないことである。だから、こういう珍説を耳にしても、モンゴル人もキリスト教徒も笑ってすませる。が、韓国のように名のある人や、多くの国民がそれを主張すれば、大袈裟でなく国際紛争の元にもなりかねない。
※週刊ポスト2011年10月28日号