東京電力の賠償問題で、どれだけの国民負担が生じるのか注目が集まっている。なぜ、国民が損をかぶらなくてはならないのか? そのからくりを東京新聞・中日新聞論説副主幹の長谷川幸洋氏が解説する。
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民主党政権はずっと「東電に徹底してリストラを求め、国民負担を最小化する」とか「税金で東電を救済することはない」と言ってきた。
ところが、先ごろ発表された経営・財務調査委員会の報告によれば、4兆5000億円に上る当座の賠償負担を賄うのは、原子力損害賠償支援機構が東電に支払う支援金だ。リストラで生み出す余剰資金は経営改善に回される結果、東電は資産超過になって債権カットや株式の100%減資はなく、銀行や株主は負担せずに済んでしまう。
しかも支援機構が払うカネの返済計画もない。最終的に返済しなくてもいい資金がつぎこまれる可能性も高い。機構の原資は国の資金だ。もちろん、いずれは国民の肩にのしかかってくる。銀行や株主は金儲けで投融資していたのに、なぜ国民が損をかぶらなくてはならないのか。ここにも経産省の利権が潜んでいる。
最終的に国が賠償負担の一部を賄うのは避けられないとしても、まず経営者と社員、OB、次いで株主と銀行が負担するのが資本主義のルールである。そのあたり、マスコミの追及は実に甘いと言わざるをえない。
※週刊ポスト2011年11月11日号