民主党政権は3代続けてゴルフをしない首相を輩出したが、かつての歴代首相はみな、個性的なゴルファーばかりだった。彼らとのラウンド経験豊富な上杉隆氏が麻生太郎氏のゴルフスタイルを分析する。
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麻生太郎は、典型的な形から入るタイプである。ゴルフのファッションもスタイリッシュで、プレー中の身のこなしも洗練されてカッコイイ。しかし、うまくいっている時はいいが、失敗するとそれは悲惨な結果をもたらす。
首相になる直前、富士ゴルフコースで麻生氏のラウンドを見たことがある。さすがクレー射撃の元オリンピック代表だけあって、アドレスには時間をかける。ボールの後方から見て、ワッグルを繰り返し、アドレス。また外して仕切り直し。それでもまだ打たない。 やっと打ったと思ったら、左の林へ。すると麻生氏はこう一言つぶやいたのだ。
「おーっと、左肩が止まっちまったぜ」
人の目を気にしすぎるためか、慎重になりすぎて、意外に決断力がありそうでない。そこがこのタイプの特徴だ。このシーンは、何も決断できずに言い訳に終始した、後の首相時代を暗示するかのようだった。
「自分もなかなか打てないタイプ」という人は、この麻生型に分類されるかもしれない。しかし、落胆することはない。本当のトップ・プロは、細かいところに非常に気を使うものだ。ジャック・ニクラスなどがその典型で、納得のいくまで何度でもアドレスをやり直したものだった。
もちろんカッコつけたっていい。必要なのは、それを裏付けるだけの実力を身につけることである。言い訳は厳禁と自分に言い聞かせ、失敗の原因を克服する努力にエネルギーを集中すればいい。
どんなトップ・プロも、気の遠くなるような長い時間、練習を繰り返して自らのスタイルを作り上げている。麻生氏はその意味で最高のモテゴルファーだ。ただし、スロープレーは周りの迷惑になることをくれぐれも忘れずに。
※週刊ポスト2011年11月18日号