二転三転の大騒動のあとに誕生することとなった横浜DeNAベイスターズだが、はやくもその監督人事に注目が集まっている。そこで浮上した、元巨人・桑田真澄氏の名前。ノンフィクション・ライターの神田憲行氏によれば、視野の広さというのが最近の監督トレンドであり、桑田氏はそれを「持っている」のだという。以下は、神田氏の解説である。
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横浜DeNAベイスターズの監督候補に元巨人の桑田真澄氏が浮上しているとスポーツ・メディアが伝えている。もともと理論家で、現役引退後も早稲田大学大学院で一年間学んだほどの勉強家でもある。
楽天イーグルスの監督時代に桑田氏と会談した野村克也氏も、桑田氏について、「遊ばしておく、もったいないな。好きだね、あれは。野球が」と深く頷きながら印象を語っていたのを私は覚えている。
もっとも当時の桑田氏は再びユニフォームを着る可能について、「アメリカでも日本でもいくつかのチームからお話はいただいたんですが、まだ勉強不足なので……」と説明して、野村氏から「あんたが勉強不足なら、他のみんなも勉強不足や」と笑われていたが。
私が桑田氏が面白いと思うのは、巨人からいったん離れて、二年間米メジャーのパイレーツでプレーしていることだ。純粋培養でなく外の水を飲んでいる視野の広さがある。桑田氏自身も野村氏に「アメリカにいればいるほど、日本の素晴らしさがわかるんですよ」と説明していた。
視野の広さ、というのが最近の監督トレンドだと思う。
今季のセパのクライマックス・シリーズに進んだ六球団のうち、ソフトバンク・秋山監督、西武・渡辺監督、ヤクルト・小川監督に共通するのは二軍監督の経験がある、ということだ。日本ハム・梨田監督も近鉄時代に二軍監督から一軍監督に昇任し、リーグ優勝に導いている。
二軍監督をすると、埋もれている選手の発掘や若い選手の育成にも目が届くようになる。ヤクルト・小川監督がレギュラーシーズンに一度も起用していなかった山田哲人をいきなりクライマックス・シリーズで「1番・遊撃手」で抜擢したのはその好例だろう。
かつて監督はスター選手が横滑りで就任することが多かった。メディアでも取り上げられるし、集客効果もあると考えられたからだ。
しかしクライマックス・シリーズという制度が始まり、監督個人の人気に頼らなくても良くなった。シーズンで二位以内に入れば本拠地で試合ができて、十分な集客が期待できるからだ。表面的な人気より実力派監督が歓迎されるという本来の監督評価につながったともいえる。また外部からスター選手を呼んでくるより契約金も抑えることが出来る。
二軍監督の経験が無くても、中日・落合監督はキャンプで一・二軍の壁を払って「先入観」を払拭することにつとめ、大きな結果を残した。ひょっとしてスター選手で監督になり、結果を残せたは落合監督が最後になるかもしれない。
桑田氏にはぜひ挑戦して欲しい。