国際情報

移民=危険で治安悪化説は一面的な見方だと大前研一氏が指摘

日本経済にとって極めてシリアスな未来予想がある。デモグラフィー(人口統計学)による将来人口推計だ。少子高齢化で2055年の日本は、最も人口の多い年齢が男女とも80歳を超えると予想されている。そんな日本がいかにして危機を乗り越えるか、大前研一氏が解説する。

* * *
日本の場合、移民政策に対しては世論の反発が大きい。すぐに「移民を入れたら犯罪が急増する」「日本全土を“新大久保”化する気か」(石原慎太郎・東京都知事)という単純な議論になる。だが、それは違う。移民=危険&治安悪化というのは一面的な見方にすぎない。

参考となるのは“移民先進国”シンガポールの例だ。日本よりも早く少子化が進んだシンガポールは早々に移民政策を導入し、人口を300万人台から約500万人に増やしてきたが、治安は全く悪化していない。移民の受け入れに際して、学歴に加え、金融のディーラー、ITのエキスパート、バイオの研究者など、シンガポールに不足しているスキルやシンガポールの将来に必要な資格を持っていることを条件にしたからだ。

しかも、世界トップクラスの人材については、シンガポール政府が自らスカウトしている。たとえば、シンガポール証券取引所の会長は世界最強の取引所と評されるOMX(現在のNASDAQ OMX)の元社長マグナス・ボッカーだ。

海運会社ネプチューン・オリエント・ラインズ(NOL)の会長には世界一の海運会社マースク・ラインの元常務やドイツの物流会社の役員をスカウトしてきている。このように世界中から優秀な人材を集める移民政策によって、シンガポールは合計特殊出生率(1人の女性が一生に産む子供の平均数を示す指標)が1.28(2008年)で日本の1.37(2009年)より低いにもかかわらず、人口を増やした上で、高い1人当たりGDPを維持しているのだ。

※SAPIO2011年11月16日号

関連キーワード

トピックス

屋根工事の足場。普通に生活していると屋根の上は直接、見られない。リフォーム詐欺にとっても狙いめ(写真提供/イメージマート)
《摘発相次ぐリフォーム詐欺》「おたくの屋根、危険ですよ」 作業着姿の男がしつこく屋根のリフォームをすすめたが玄関で住人に会ったとたんに帰った理由
NEWSポストセブン
人が多く行き交うターミナル駅とその周辺は「ぶつかり男」が出現する(写真提供/イメージマート)
《生態に意外な変化》混雑した駅などに出没する「ぶつかり男」が減少? インバウンドの女性客にぶつかるも逆に詰め寄られ、あわあわしながら去っていく目撃談も
NEWSポストセブン
現在はニューヨークで生活を送る眞子さん
「サイズ選びにはちょっと違和感が…」小室眞子さん、渡米前後のファッションに大きな変化“ゆったりすぎるコート”を選んだ心変わり
NEWSポストセブン
大の里、大谷
来場所綱取りの大関・大の里は「角界の大谷翔平」か やくみつる氏が説く「共通点は慎重で卒がないインタビュー。面白くないが、それでいい」
NEWSポストセブン
悠仁さまの通学手段はどうなるのか(時事通信フォト)
《悠仁さまが筑波大学に入学》宮内庁が購入予定の新公用車について「悠仁親王殿下の御用に供するためのものではありません」と全否定する事情
週刊ポスト
すき家がネズミ混入を認める(左・時事通信フォト、右・Instagramより 写真は当該の店舗ではありません)
味噌汁混入のネズミは「加熱されていない」とすき家が発表 カタラーゼ検査で調査 「ネズミは熱に敏感」とも説明
NEWSポストセブン
男性キャディの不倫相手のひとりとして報じられた川崎春花(時事通信フォト)
“トリプルボギー不倫”の女子プロ2人が並んで映ったポスターで関係者ザワザワ…「気が気じゃない」事態に
NEWSポストセブン
CM界でも特大ホームラン連発の大谷翔平
【CM界でも圧倒的な存在感の大谷翔平】「愛妻家」のイメージで安定感もアップ、家庭用品やベビー用品のCM出演にも期待
女性セブン
堀田陸容疑者(写真提供/うさぎ写真家uta)
《ウサギの島・虐殺公判》口に約7cmのハサミを挿入、「ポキ」と骨が折れる音も…25歳・虐待男のスマホに残っていた「残忍すぎる動画の中身」
NEWSポストセブン
船体の色と合わせて、ブルーのスーツで進水式に臨まれた(2025年3月、神奈川県横浜市 写真/JMPA)
愛子さま 海外のプリンセスたちからオファー殺到のなか、日本赤十字社で「渾身の初仕事」が完了 担当する情報誌が発行される
女性セブン
昨年不倫問題が報じられた柏原明日架(時事通信フォト)
【トリプルボギー不倫だけじゃない】不倫騒動相次ぐ女子ゴルフ 接点は「プロアマ」、ランキング下位選手にとってはスポンサーに自分を売り込む貴重な機会の側面も
週刊ポスト
ドバイの路上で重傷を負った状態で発見されたウクライナ国籍のインフルエンサーであるマリア・コバルチュク(20)さん
《ドバイの路上で脊椎が折れて血まみれで…》行方不明のウクライナ美女インフルエンサー(20)が発見、“危なすぎる人身売買パーティー”に参加か
NEWSポストセブン