自民党が政権の座にあった2年前なら命取りの大スキャンダルになっていたはずである。自民党に国有地の「不法占拠」が発覚した。
国会議事堂から徒歩3分の自民党本部(千代田区永田町1)は国有地(財務省所有)に建てられ、同党は年間約8970万円という格安の賃料を財務省に支払っている。だが、敷地のうち4分の1にあたる衆議院所有の駐車場部分(1320平方メートル)は47年間にわたってまったく賃料を支払っていない事実が発覚した。
この土地は衆議院所管の「行政財産」に分類され、国有財産法で売却や貸与はできないと定められている。それを自民党は党本部の塀の中に囲い込んで私物化しているのだから、まさに不法占拠そのものだ。
本来、借りられるはずのない土地ではあるが、財務省の賃貸契約基準をもとに換算すれば、賃料は年間約3500万円になる。自民党が踏み倒してきた使用料は、47年分でざっと16億円になる計算だ。
さる11月1日、「自民 国有地を無償使用」(読売)など新聞・テレビは一斉にこの事実を報じた。
政治資金オンブズマン共同代表の上脇博之・神戸学院大学法科大学院教授(憲法学)が指摘する。
「国が特定の政党に根拠もなく特権を与えてきたわけで、官僚も知っていながらずっと隠してきた。これはかつての政権党による権力の乱用です。納税者への背信行為だ。自民党は過去にさかのぼって賃料を支払うのが当然です。加えて私は、今後は使い続けることを許すべきではないと考えます」
国有財産を管理する財務省理財局の通達である『不法占拠財産取扱要領』によると、不法占拠者には「国有財産の返還」と「損害金の支払い」を請求し、督促に応じない場合は、「速やかに訴訟に移行すること」とされている。
損害金には占拠期間の賃料相当額だけでなく、年5%の延滞金が加算される。本誌試算では延滞金は47年分で約20億円に上る。賃料を合計して約36億円を自民党は支払わなければならない計算だ。
請求期間は、民法(724条)の規定で「20年間」とされている。しかし道義的に考えれば「時効分は払わない」との主張は許されないだろう。
本誌は今年9月30日号で、自民党の財務資料をもとに、前回総選挙時の借入金100億円を抱えているのに、昨年末の時点で繰越金は7億円しかなく、債務超過状態にあることを報じた。そこに36億円の請求書を突きつけられたら、いよいよ破産である。
※週刊ポスト2011年11月25日号