全国ツアー中の安室奈美恵が、11月6日に行なわれた横浜アリーナでの公演を途中で打ち切り。ステージ上で観客に謝罪した。
「喉の不調があり、改めてベストな状態でやりたい。振替公演(12月27日)をさせてください」
この日、安室は公演前から喉に違和感を持っていたものの、予定通りにステージに上がった。が、6曲を歌い上げたところで、症状が悪化したために中止を決めたという。
「前日の公演の時からすでに、バラードで高音を出すのに苦労している様子だったし、一度声が裏返って舌を出すシーンもあった。調子は良くなさそうだった」(ファンの1人)
いきなりの中止に会場は騒然……かと思いきや、詰めかけた1万人のファンからはブーイングどころか拍手の嵐。「早く良くなってね~!」「必ず(振替公演に)来るよ!!」と声援が飛び、20代の女性ファンは「2回も安室ちゃんが見られるんだから得した気分」と顔を紅潮させていた。
批判されなかった理由は安室のコンサートの“特徴”に関係しているようだ。
安室のコンサートでは曲の合間のMCが一切ない。衣装替えを2、3度挟む以外は、激しいダンスをしながら約25曲を2時間ぶっ通しで歌い続ける。昨年はなんとこれを年間80回。
「安室ちゃんがコンサートで言葉を発するのは、アンコール終了後の“皆ありがとう”“また来てね”“バイバイ”だけ。観ているこっちも、2時間立ちっぱなしなので本当に疲れます(笑い)」(前出のファン)
安室ちゃんも御年34。それで“フルマラソン並み”のステージを4日に1度のペースでこなすのだから、見上げたプロ根性である。
最近、テレビの露出はめっきり減ったのに、公演は毎回が満員御礼。グッズも飛ぶように売れ、会場の売店には長蛇の列ができる。
「安室がこれだけの支持を得ているのは、こうしたプロ意識に理由があるのでしょう。歌もダンスも手を抜かない姿勢には頭が下がる思いです」(芸能レポーター・井上公造氏)
確かに安室の姿勢は、昨今の音楽界で当たり前となっている“口パクアーティスト”とは一線を画す。
「コンサートだけでなく音楽番組でも横行している。某アイドルは、テレビ番組で歌っている最中、マイクスタンドが倒れたのに声が流れ続けた」(テレビ局音楽担当者)
喉は歌手の商売道具。“メンテナンス”に失敗した安室も誉められたものではないのだろうが、全く使わないというのでは興ざめもいいところ。安室へのエールにビクビクしている歌い手は意外と多かったりして。
※週刊ポスト2011年11月25日号