福島第一原発はなぜ未曾有の大事故に至ったのか、その原因は徹底的に究明されなければならないが、政府・保安院の調査だけではこころ許ない。そこで元原子炉設計者でもある大前研一氏が、専門家らの協力のもと独自調査によりセカンド・オピニオンを発表した。 このプロジェクトの意図を大前氏が解説する。
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福島第一原発事故に対する国の動きは、あまりにも鈍重だ。政府の事故調査・検証委員会は「中間報告」を、ようやく12月26日に行なうという。国会の事故調査委員会は、本稿を書いている時点では、まだメンバーも決まっていない。このままいくと、2012年5月には全国の原子炉が止まり、日本は急激な電力不足に陥って国民生活も産業も極めて深刻な事態に直面する。その前に事故原因を究明し、それに基づく的確な安全対策を実施
して、地元住民の理解が得られる原子炉は生き残らせなければならない。
事故直後からそう考えていた私は7月、細野豪志原発相と会い、次のように提案した。
必要な情報にアクセスさせてくれたら、ボランティアで事故原因を分析して3か月以内に再発防止策の「セカンド・オピニオン」をまとめる。次の3か月でIAEA(国際原子力機関)に説明し、電力業界に必要な改善策を実行させる。そして次の3か月で地元住民の理解を得て再稼働できる原子炉は再稼働する。
つまり9か月あれば、全原発が止まるという事態は回避できるかもしれない。そのためには今すぐ作業に着手しなければならない。
これに対し、細野氏は「ぜひ、お願いしたい」と答え、東京電力、日立GEニュークリア・エナジー、東芝などの関係企業も原発の実務経験者、原子炉の設計者などプロ中のプロを集めて協力してくれた。その人たちに私が質問してデータを出してもらうという形で調査・分析を進めたところ、2か月で作業は終了し、10月28日に「福島第一原発事故から何を学ぶか」中間報告書を細野氏に提出した(報告書の内容はBBT〈ビジネス・ブレイク・スルー〉のサイト〈http://pr.bbt757.com/2011/1028.html〉やYouTubeで全面公開している)。
※SAPIO2011年12月7日号