この季節になると、プロ野球界では“コーチ”という職を巡る求職活動が活発化する。その理由はプロ野球OBを取り巻く環境の厳しさにある。超一流選手の証である名球会会員であってもコーチや専属解説者など生計を支えるだけの“定職”があるのは約7割。「失業率30%」という時代なのだ。「フツーのOB」ともなれば、さらに「無職」が増える。
ただ、コーチになれたとしても、さほど待遇が良いわけではない。現役時代、年俸5000万円は下らなかった中心選手でも、コーチになれば年俸は約1000万円が相場。二軍コーチは800万円がいいところだといわれる。
地方球団のコーチとなれば、自宅から離れて、本拠地近くにワンルームマンションを借り、単身赴任生活を送る者も少なくない。二軍のコーチの場合は選手より朝早くに球場に出かけ、居残り特訓で遅くまで付き合い、後片付けをして帰りは夜10時過ぎ、という生活だ。それでも、あるベテランOBは、「なれるだけマシ」と語る。
「ユニフォームを脱げば、水商売か嫁の実家の家業を継ぐしかない。コーチの平均年齢は42歳前後。子供の教育費がかさむ時期だから、文句なんていっていられない」
あるパ球団の現役コーチも率直にいう。
「一軍のコーチであれば移動時のスーツなどが支給され、選手との会食や飲み代も領収証で精算できるので、シーズン中の持ち出しはほとんどない。二軍でもユニフォームの洗濯くらいはやってくれるし、試合前の食事は球団持ちになる。一度ありついたら、手放したくない」
※週刊ポスト2011年11月25日号