ここしばらく日本の政治の一大トピックとして、侃侃諤々の議論が展開されているTPP(環太平洋経済連携協定)への参加是非。そもそもTPPとは何なのか。政府の国家戦略室がまとめた資料によれば、TPPの母体となったのは2006年に発効したシンガポール、ニュージーランド、チリ、ブルネイによるP4協定(環太平洋戦略的経済連携協定)だ。大前研一氏が解説する。
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これはサービス貿易、政府調達、競争、知的財産、人の移動などを含む包括的協定で、APEC参加メンバーに開放されており、物品貿易に関しては原則として全品目について即時または段階的に関税を撤廃する、という内容である。
2010年3月、前記4か国にアメリカ、オーストラリア、ペルー、ベトナムを加えた8か国でP4協定を発展させたTPPの交渉を開始。同年10月からマレーシアが新規参加して9か国となり、24の作業部会を立ち上げて議論を進めているという。
つまり、TPPで何をやるか、具体的にはまだ何も決まっていないのである。私は推進派の人たちに「何がTPPの対象になるのか」と質問してみたが、誰も明確に答えられなかった。
もし、ヒト、モノ、サービスの行き来を自由にするというのなら、究極的にはEUのかたちに行き着く。たとえばEUで可能になったことの一つに国家資格の相互認証がある。医師、看護師、弁護士、会計士、教師などは、EU加盟国の国家資格取得者であれば、国境を越えて仕事ができるのだ。そこまでTPPが想定しているならば非常に理解しやすいが、「そうだ」という人はいないのである。
※週刊ポスト2011年12月2日号