オウム裁判終結――元幹部の遠藤誠一被告の上告が最高裁で棄却されたことで焦点は、次なる段階に移った。すなわち教団教祖・麻原彰晃(松本智津夫)死刑囚の刑がいつ執行されるのか、である。
麻原死刑囚は現在、どのような拘置状況にあるのか。
弁護団関係者によれば麻原死刑囚は独りごとを呟きながら、トイレにも行かず、常時おむつを着けているという。
東京高裁に提出された、麻原死刑囚が“現状況では裁判が出来る状態ではない”ことを伝える弁護士側の「意見書」には、2004年一審判決当時の様子が綴られている。
〈夜間に布団の中で「うん、うん」と声を発し、笑い声をあげたが、その後は房内に安座して独り言を言っている〉〈接見の最中に服の上から股間を擦り、ついには陰茎を露出させて自慰行為をし、射精にまで至った〉
自慰行為は娘との接見の際にも行なわれたとされ、これをもって麻原死刑囚の精神疾患を疑う向きもある。
だが、塀の外から麻原死刑囚を判断しても、想像の域を出ない。憲法学の権威である慶應大学法学部・小林節教授はこう断言する。
「三審制の裁判を終え、死刑判決が下ったなら死刑が確定したということ。最終的には、法務大臣の判断一つで死刑を執行できます」
平岡秀夫法相は今年9月の就任時、海外での死刑廃止化の流れをうけ、死刑の是非を考える省内勉強会が続いていることに触れ、「考えている間は判断できない」と語った。今回のオウム裁判終結後も、慎重な姿勢を崩さない。
しかし、法務省関係者の見方はあくまで強気だ。
「死刑廃止論者だった千葉(景子)さんが法相だった昨年も、最終的に死刑執行の起案書に判子を押した。最初は千葉さんも難色を示していましたが、『大臣、逃げるんですか』『法務大臣としての職務を果たしてください』と周囲が強く迫ったようです。
今回も平岡法相は、省内で相当な圧力をかけられている。もちろん判断にあたり、野田内閣の意向もかかわってくるでしょう」
オウム裁判開始から16年――。今後、刑の執行へ向けての手続きが進められていくと見られるが、結局、麻原死刑囚からは謝罪や真相解明への言葉は何ら得られることはなかった。
※週刊ポスト2011年12月9日号