福島第一原発の事故から8か月あまり。いま福島原発から出ている放射性物質「セシウム」の量は、事故直後の1300万分の1にまで減少している。11月17日の会見で政府・東電統合対策室は、年内の原子炉冷温停止に自信をのぞかせ、ようやく出口が見え始めたかに見えた。
しかし、その後、原発3号機の原子炉建屋内部で毎時1600ミリシーベルトという、測定が始まった5月10日以降で最高の放射線量が記録されたことが発覚。国民の間には「やっぱりまだ危険なのでは…」という恐れが増している。
安心と不安が混ざりあうなか、私たちの生活にかかわる重大なニュースも発表された。これまで国が発表してきた放射能汚染マップは東北、関東の12都県分にとどまっており、「放射性物質が飛んだのは東北・関東だけ」と思い込んでいた人も多いはず。
ところが民間の学者が行った調査で、放射性物質は西日本や北海道まで拡散していたことが突き止められたのだ。
調査したのは東京大学と名古屋大学などの国際研究チーム。事故後の3月20日から4月19日までを調査期間とし、地球全体を20km四方で区切って風や気温などをリアルタイムで観測する「大気輸送拡散モデル」によるシミュレーションと、文部科学省による全国のモニタリングデータを組み合わせて、日本全国におけるセシウム137の汚染状況を初めて見積もった。その結果、微量ではあるが、中国・四国地方や北海道の地表にまでセシウムが沈着している可能性が明らかになった。
今回の調査に参加した名古屋大学地球水循環研究センター教授の安成哲三さんは「冷静な対応が必要です」と強調する。今回の推定では、土1kgあたりの汚染濃度は高いところでも北海道東部の一部で250ベクレル、中国・四国地方の山岳部では数十ベクレル程度。これは肉や野菜など食べ物の出荷基準に照らしても、規制値をはるかに下回るレベルだ。
「今回の調査で推定された西日本や北日本の汚染量は微量で、除染が必要なレベルではない」(安成さん)
ただし注意点もある。事故直後に大量に放出されたはずの放射性物質は今回のシミュレーションに含まれていないのだ。
「最も放出量が多かった事故から9日間の放出量は観測データがなく解析に含まれていないので、実際の沈着量は今回の推定より高くなると考えられます」(安成さん)
※女性セブン2011年12月15日号