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チェルノブイリ150km地区 25年後の今も体内被曝者出ている

ベストセラー『がんばらない』の著者で諏訪中央病院名誉院長の鎌田實氏は、チェルノブイリの子供たちへの医療支援などにも取り組んでいる。その鎌田氏が、チェルノブイリ原発事故25年後の現実について報告する。

* * *
11月上旬、チェルノブイリ原子力発電所から150キロ離れたベラルーシ共和国ゴメリ州ベトカ地区にある、地区病院の女性院長を日本に緊急招へいした。彼女の名は、ジミナ・ナジェージダさん(49歳=愛称「ナージャ先生」)。ジミナは冬、ナジェージダは希望という意味がある。

ベトカ地区では、健康診断とホールボディカウンターによる体内被ばく量を測定し、体内被ばく者が出ると徹底的に食事の管理をしている。

トマトやキュウリは流水で洗う。キャベツは外葉を取る。カブやニンジンは茎の根もとを切り取る。じゃがいもは洗って皮をむく。セシウムは水に溶けるので、ゆでたりピクルスのような酢漬けにして、食べ物のセシウムを外に出すような食事を、ナージャ先生は住民に指導している。

さらに利尿作用のあるハーブ茶を飲ませたり、ペクチンが豊富なリンゴやクランベリー、スモモ、カシスなどを摂取するように呼びかけている。

さらに、1日に1000件もの検査ができるように、食べ物の放射線測定器をいくつも置いて、自分の家の庭や畑でできた野菜も測れるようにしている。

これだけの態勢を取っているのに、なぜ新しい体内被ばく者がでるのですか、と僕はたずねた。ナージャ先生は「野生のイノシシやシカのハンターたちが原因なのです」と答えた。

ロシアでは、ハンターは許可制。正規のハンターは、獲ってきた肉もきちんと測定して食べているが、無許可でハンティングしている人が、測定せずに隠れて食べて被ばくするのだという。

「私たちの国では、そういう人がいて困るけれど、日本人はルールを守るので、早くホールボディカウンターを各市町村に置いて測定し、食物の放射線量を測っていけば、日本ではもっといいコントロールができるはずです」とナージャ先生は言う。

※週刊ポスト2011年12月9日号

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