料理研究家の鈴木登紀子さん(88)は、女性の作法に造詣が深い。「ようすのいい女性におなりなさいね」――この「ようすがいい」とは、鈴木さんの母・千代さんが女性を評するのに好んで使った言葉。容姿ではなく行儀作法、気働き。そんな“よいようす”を作るのは「相手を思う心」だと鈴木さんはいう。米寿を迎えた鈴木さんが「食べる時」の作法を教えてくれた。
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好物を最初にいただく人、最後まで取っておく人、お食事のいただき方はそれぞれですが、守らねばならない最低限の作法がございます。
焼き魚や煮ものが出ているのに、お漬けものから箸をつけてはいけません。お漬けものというのは食事の最後にご飯といただくもの。お料理屋さんでもお献立の最後にご飯と出てまいりますでしょう?
またこのごろでは、ペットボトルのお茶や水を飲みながらお食事するのが当たり前のようになっていますが、これもマナー違反。私などは「あら、お茶で飲み下さなければ食べられないようなものは作っておりませんけれど?」と、イヤミのひとつもいいたくなります。この間も、お稽古が始まるなりペットボトルをテーブルに置いた生徒さんに、「始末してからいらっしゃい」と申しました。
お茶はお食事のあとにいただくものです。そのかわりに、食後すぐにお出しできるよう、あらかじめ茶道具をセットしておく心配りが大切です。
口やかましい意地悪ばぁばのようですが、食事のしつけは、子供が小さいころからしっかりと行ってくださいませ。私は相手がどなたでも、そのかたのためと思ってその場でお小言を申しますが、将来、「お里が知れる」と陰口を叩かれては子供がかわいそう。恥を恥と知らしめてしつけるのは、親の責務でございますよ。
【プロフィール】
すずき・ときこ 11月14日、青森県八戸市生まれ。46才で料理研究家としてデビュー。以来、テレビや雑誌などで幅広く活躍。『きょうの料理』(NHK)への出演は40年に及ぶ。現在、東京・田園調布の自宅で料理教室を主宰。『登紀子ばぁばのお料理たしなみ帖』(家の光教会刊)はじめ著書多数。
※女性セブン12月15日号