欧州債務危機の拡大懸念が強まっている。では、日本の為すべきことは何か。大前研一氏は、やり方によっては日本が欧州経済救済で、世界のヒーローになれると指摘する。以下は、大前氏の解説である。
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欧州債務危機は、最初の国が流動性危機でデフォルトしないように資金を供給してあげることが最も重要なのる。その点、EUの対応は拙劣だった。
ギリシャのデフォルトを何としても食い止めるべきだったのに、ユーロ圏首脳会議で民間銀行が保有するギリシャ国債の元本の50%削減を自発的に受け入れる、という中途半端な救済策を出した。
これは事実上のデフォルトである。実際、欧州系大手格付け会社フィッチは、デフォルトに相当する、との見解を発表している。
この先は、絶対、イタリアにデフォルトが飛び火しないようにしなければならない。具体的には、EFSF(欧州金融安定基金)の“見せ金”の大きさが重要だ。ギリシャやイタリアどころか、EUのどの国が流動性危機に直面しても安心できる規模に拡大すべきである。
その額は、私は300兆円だと思う。ユーロ圏17か国は10月末にEFSFの1兆ユーロ(約103兆円)への規模拡大に合意しているものの現在の融資能力は、まだ約4400 億ユーロ(約45兆円)でしかない。
日本が為すべきことは、積極的なEFSFへの資金拠出である。これまでにEFSFは160億ユーロ(約1兆6500億円)の債券を発行しており、日本はそれを買う形で全体の2割近い約30億ユーロ(約3100億円)を拠出している。
日本政府は「すでに我々はEFSFを支えるために一国で2割を負担しています。今後も、どれだけ規模が拡大しても“2 割負担”を守ります」と宣言すべきだと思う。そうすれば日本は世界のヒーローになれる。
そこまでする必要があるのか、という批判が出てくるかもしれないが、EFSFが300兆円に拡大したとしても2 割なら60兆円だ。それに、寄付するわけではなく金利も付くのだから、余っている外貨準備や外国為替資金特別会計を国内に寝かせておくよりは、日本にもメリットがある。
※週刊ポスト2011年12月16日号