食品安全を越えた〈命の危機〉に直結する〈F1種〉というタネが、アメリカからなだれこんでくるという。タネが日本人を滅ぼすのか!? 〈無精子症〉〈精子減少〉について、作家の山藤章一郎氏がレポートする。
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「医者に『精子がぜんぜん動いてないですね』といわれました。以前の診療時も、精子の運動率が低く、10%台だったのですが、こんどはまったく0%。数は多いのですが、パソコンの画面の中で精子そのものはぜんぜん動かない。頭の中が真っ白になりました」
不妊治療に訪れた男性が不安を訴える。
衝撃のレポートがある。20代男性の精子数は、40代前後にくらべて半数ほどしかない。
1ミリリットルあたりの平均精子数――40代は8400万個、20代は4600万個という数値が出た。(帝京大学医学部調べ)
日本だけではない。デンマークの医師も40代7800万個、20代4580万個と、日本と変わらない数値を発表している。20年間で、3200万~3800万個の精子が減少したことになる。
厚労省は「仮説の段階だ」として規制に乗り出してはいないが、学校給食、インスタントラーメンのカップ容器、水道水、さらに広範囲に、若者の食生活から検出される環境ホルモン=内分泌攪乱物質が、不妊や少子化にいたる原因ではないかという学者もいる。
『はらメディカルクリニック』原利夫院長の分析。
「環境ホルモンがいわれ始めた20年ほど前から、精子減少、女性ホルモン化が分かってきました。レイチェル・カーソンが『沈黙の春』でワニのメス化、サカナのメス化は、一部、食品容器に含まれている化学物質による作用かと指摘しました。以来、それが睾丸にある種の害を及ぼして、精子数を減少させているのではないかと。
ほかにも工場排水、電柱の変圧器から漏れ出してくる物質、たばこ、牛を早く出荷させるため、鶏に卵をたくさん産ませるためにエサに混ぜる成長ホルモン剤など、奇形の精子、不妊の問題にまで広がって、なにが精子減少を引き起こしているのか、解答は容易ではないのです」
※週刊ポスト2011年12月16日号