歴史的な円高のなか、注目を集めているのが外貨預金だ。最近の相場は1ドル77円前後、1ユーロは104円台。4年前には1ドル110円、1ユーロ160円ほどだったことを考えると、当時に比べて3~4割は“安く買える”ようになっている。
例えば1ドル77円のときに、1万ドルを77万円で買い、将来円安になって、1ドル100円になったとすると、77万円で買ってあった1万ドルが100万円になる計算だ(為替手数料、金利は考慮せず)。
そのため現在、外貨預金を始める人が急増。個人の外貨預金総額は2008年のリーマンショック以降4兆円台だったが、今年8月には5兆1562億円に達した。ただし問題は、これから円安に向かうかどうか。さらなる円高が進めば、逆に損することになるからだ。
「いま、ドルやユーロを買うのは危険」
というのはファイナンシャルリサーチ代表でFPの深野康彦さん。この円高はしばらく続き、円安に転じるのはまだ先と見ているという。
「アメリカが金利を上げれば、ドルが買われ、円安に動くのですが、今後2年程度、アメリカは金利を上げない方針を打ち出しています。欧州危機の先が見えないユーロは買える状況ではありません。いまは円安の気配すら見えない状況です」(深野さん)
2国間の為替レートが動く大きな要因は「金利差」で、金利が高いほうの通貨が買われ、安い通貨が売られるのが普通。日本で銀行に預けてもほとんど利息がつかない現状では、金利の面で外貨預金に魅力を感じる人も多いだろう。しかし、深野さんはこう疑問を呈する。
「日本は金利が低いといわれていますが、世界の投資家はそう見ていません。政策金利(各国の中央銀行が市中銀行との取引に用いている金利)から消費者物価の上昇率を引くと実質金利が出ますが、日本はデフレで消費者物価指数が低いので、実質金利は諸外国に比べて高い。だから円が買われているんです」
金利が高くても、消費者物価の上昇率がそれ以上に高ければ、通貨の実質的な価値はマイナスになり、実質金利は低くなるというわけだ。例えば、金利10%の国に100万円預けて1年後に110万円になったとする。しかし、同時に物価が20%上がってしまうと、100万円で買えていたものが120万円払わなければ買えなくなるので、実質的には損することに。
「唯一日本より実質金利が高いのはオーストラリア。今回のボーナスで狙うなら豪ドルぐらいでしょう」(深野さん)
※女性セブン2011年12月22日号