科学の発達したこの時代においても、まだまだ未知の部分が多い「脳」。そんな未知の臓器に迫る本『脳科学は「愛と性の正体」をここまで解いた』(河出書房新社)が出版された。
男女の絆、プラトニックな愛、肉欲、母性愛、同性愛など、愛と性のさまざまな謎を脳科学の見地から答えていく本だ。著者の新井康允さん(78)によれば、
「もともと愛や恋の問題は、小説や哲学などで扱われてきた分野で、最近は心理学でも研究されていますが、あくまでも体験に基づいて頭で考えたことが中心です。私は愛が生まれる場所は脳だと思っています。脳がどのように働くと愛が生まれるのか、恋愛中の脳はどう働いているのか、そういった事実にすごく興味がありました。
近年は脳内の活動をリアルタイムで画像化できる装置が開発され、脳科学の分野はより発展をとげており、愛情と脳の働きに関してもさまざまなことがわかってきたのです」
脳の部位が活発に働いているときは、その部分の血流が急激に増加する。この特性を利用し、機能的磁気共鳴画像(fMRI)で、どんなことをすると、脳のどの部位が働くかを画像でとらえられるようになった。
実際、恋愛をするとき、脳内はどのように働くのか?
「脳内で相手を好ましいと思うには、性的魅力、相性、好き、嫌い、声やにおいなどいろいろな要因が関係していますが、特に大事なのは、視覚情報です。少し難しい話になりますが、目からはいった情報は、まず後頭葉の視覚野にはいり、それから大脳皮質の後頭葉と側頭葉にまたがった紡錘状回というところにある、顔の認知領域にはいります。
そこで見た顔やスタイルが好きか嫌いか、怖いかなどが判定され、その情報が情動脳や前頭前野に送られ、感情が生まれます。このとき好ましいと判定されると女性はオキシトシン、男性はパソブレシンという神経ホルモンが分泌され、満足感や多幸感を覚えるのです」
人間の脳の中には、自分にご褒美をあげるがごとく、快楽を感じる「報酬系」と呼ばれる神経回路のシステムがある。オキシトシンとパソブレシンはこの部位を刺激し、脳内快楽物質のドーパミンの分泌の調節をするのだそう。つまり人間が愛や恋を欲するのは、脳内快楽物質による満足感や多幸感を味わいたいからなのだ。
※女性セブン2011年12月22日号