国内

街で人にぶつかったら3000円 「歩きスマホ規制条例」を提案

横断歩道で、駅の階段で、オフィスの廊下で、3インチより少し大きいぐらいの画面に、一心不乱に指を滑らせながら、うつむき加減で歩く人。ぶ、ぶつかる! こんな場面、誰にでも経験があるのではないか。コラムニストの小田嶋隆氏が、危険な「歩きスマホ」規制条例を提案する。

* * *
私はあえて、「歩きスマホ規制条例」を提案したい。参考になるのは、「歩きタバコ規制」だ。

路上喫煙禁止条例がスタートした当初は「罰金まで取るなんてやりすぎだ」という声が聞かれたし、様々な議論を巻き起こして、メディアに取り上げられた。規制や罰則の適否はともかくとして、アナウンス効果はあったと思う。今では、条例がない地域でさえ、歩きタバコやポイ捨てはずいぶん減った印象がある。

同じようなアナウンス効果を期待して、例えば銀座や秋葉原の歩行者天国、渋谷のセンター街といった象徴的な場所を「歩きスマホ規制地域」と定め、違反者には取り締まりを実施してはどうか。例えば、10歩以上画面を注視して歩いたら科料2000円、歩きスマホで人にぶつかったら3000円とか、イヤホンをしてゲームに夢中になっている“悪質”なケースは5000円、など。あるいは、そうした繁華街の中に、そこに入ると通信できない“コールド・スポット”エリアを設ける手もある。

なぜ象徴的な繁華街でだけ条例を定めて規制するか。それは、あらゆる場所で「歩きスマホはいけません」と横並びで啓発したって、実効性がないからだ。電車内では「優先席付近では……」というアナウンスがしょっちゅう流れているが、現実に優先席の近くでは電源を必ず切るという人は少数派だろう。鉄道会社の側も、アナウンスさえしておけばいいと思っているのではないか。

そんな形骸化した啓発を繰り返すより、賢明な「節度」を社会に作り上げることが必要だ。そのために、(象徴的な場所だけでいいから)「やりすぎだ」と思われる規制を定める。それがきっかけとなって議論が起これば、スマホの“お約束”が多くのユーザーに浸透していくだろう。

そもそも日本人は、みんなが心地よい(あるいは同じくらいに不快)と思えるものであれば進んでマナーを守るという、世界的に珍しい国民性を持っている。

エスカレーターに乗る時は片側を空けるとか、複数ある窓口で一列に順番待ちをする“フォーク並び”などはその典型だ。フォーク並びは、床にそのような表示のないサッカー場のトイレなどでも利用者自ら進んで実践している。

いったん“お約束”ができれば、それになんとなく従う。競争社会ではそんな国民性が弱点だと言われるが、ともあれそれが日本人なのである。

※SAPIO2011年12月28日号

関連記事

トピックス

紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
大村崑氏
九州場所を連日観戦の93歳・大村崑さん「溜席のSNS注目度」「女性客の多さ」に驚きを告白 盛り上がる館内の“若貴ブーム”の頃との違いを分析
NEWSポストセブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
佐々木朗希のメジャー挑戦を球界OBはどう見るか(時事通信フォト)
《これでいいのか?》佐々木朗希のメジャー挑戦「モヤモヤが残る」「いないほうがチームにプラス」「腰掛けの見本」…球界OBたちの手厳しい本音
週刊ポスト
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
連日大盛況の九州場所。土俵周りで花を添える観客にも注目が(写真・JMPA)
九州場所「溜席の着物美人」とともに15日間皆勤の「ワンピース女性」 本人が明かす力士の浴衣地で洋服をつくる理由「同じものは一場所で二度着ることはない」
NEWSポストセブン
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン