「売り上げも利益も2倍」「利益率70%は当たり前」「儲かりすぎてヤバイ」。かつてのバブルの頃ではない、今のスマホ周辺業界の話だ。この1年で一気に爆発したスマホ業界で、何が起こっているのか。
スマホの代表格、iPhone。2007年の発売以来、今年9月末までに全世界で1億4290万台を出荷するオバケ商品となっている。
アップルやサムスンなどのメーカーや、ソフトバンクなどキャリアの好調は言うまでもないが、空前のスマホブームにより周辺業界は好景気に沸いている。
「初任給は新卒採用の常識にとらわれず、能力に応じて年俸600万~1000万円」
11月4日、「モバゲー」を展開する携帯ゲーム最大手のDeNAの採用サイトにアップされた告知である。“新卒1000万円”という驚異的な金額が大きな話題を呼んだが、わずか2週間後、今度はライバルのグリーが、2013年度採用の募集要項で新卒者に年収「最大1500万円」を支払うと発表した。
DeNA広報部の説明。「『新卒エンジニアスペシャリスト採用』という枠で、飛びぬけた能力を持った技術系学生については、(通常とは)別の採用フローと基準を設けさせていただいています」
一方、グリーでは「コメントは差し控えたい」(広報担当)とするが、こちらはエンジニアだけでなく総合職も対象にしており、ライバルを上回る待遇を用意した格好だ。
この2社の成長に、スマホが果たした役割は大きい。例えばDeNAの2009年3月期決算は売上高376億円で、翌2010年3月期決算は同481億円。伸び率にして28%。これでも十分すぎる成長だが、スマホが本格的に普及した2011年3月期は1127億円と、なんと売上高は2.3倍にもなっている。同じ時期の経常利益は161億円→215億円→562億円へとやはり驚異的な伸びだ。
この1年で2社の株価は急上昇し、DeNAの時価総額は約3500億円、グリーは約5900億円。テレビ業界で最も高い時価総額の日本テレビが約2700億円であることからも、いかに市場に期待されているかがわかる。
ブームの恩恵は、部品業界にも広がっている。スマホには、端末1台でざっと1000点もの電子部品が使われている。そこに使われる様々な部品のメーカーが、特需に沸いているのだ。
有名どころでは、村田製作所やTDK。従来の携帯電話になかった無線LAN機能などの搭載により必要になった、適切な周波数の電波信号を取り出す「SAWフィルター」という部品でこの2社はシェア7割を誇り、両社とも増収増益を果たしている。
※SAPIO2011年12月28日号