スマホの普及によって業績が伸びる企業がある中で、これをチャンスと捉えたベンチャー企業が活気づいている。果たして彼らは、未来のジョブズやフェイスブック開発者のザッカーバーグのようになれるのか。
グレーのTシャツに黒のパーカー、ジーンズ姿。一見、どこにでもいる普通の若者だ。シンクランチ株式会社の代表取締役社長・福山誠氏(27歳)である。
同社は、見知らぬ人同士のビジネスランチをセッティングするサービス「ソーシャルランチ」を提供している。利用者はスマホなどを使ってフェイスブックにログイン。まずは知人・同僚とペアになる。すると自動的に別のペアが推奨され、ランチをしたいと思ったらリクエストを送信して承認されれば、実際に4人が会えるという仕組みだ。
社長の福山氏がプログラムの開発・運営を行なっている場所が、六本木にある「KDDI∞ラボ」だ。KDDIの新規事業統括本部・塚田俊文氏が語る。
「弊社では、グローバルに通用するスマホアプリを生み出すため、若手起業家を募集しました。100社以上のエントリーから今年8月に5チームを選出し、サーバーなどを提供しつつ、ソフト開発や経営面でのアドバイスをするのが∞ラボです」
ここでは、多い時には20~30人ほどの若手経営者・起業家らが集まってディスカッションやプレゼンテーションを行なっているという。
株式会社スピニングワークスの白形洋一代表取締役社長(34歳)も、ここを定期的に訪れているメンバーの一人だ。
同社では「Qlippy」という、同じ電子書籍を読んでいる読者をネット上でつなげて読者同士が交流できるサービスを展開。例えば、読んだページについてコメントを書き込んだり、他の読者と感想を共有することができる。
白形氏は「“電子書籍と言えばQlippy”と、みなさんに思ってもらえるくらい、このサービスを浸透させていきたい」と夢を語る。
株式会社ガラパゴス代表取締役社長・中平健太社長は30歳。自分だけのスマホアプリを簡単な操作で作ることができる「Rearge」というサービスを開発している。
「今はプログラムの専門家が作ったアプリを利用するのが一般的ですが、Reargeでは専門知識のない方でもアプリが作れます。友人に自分の写真や動画を入れたアプリを配ったり、自営業者の方が自分のお店のアプリを作成してお客さんに渡したりすることができます」(中平氏)
∞ラボに集う彼らに限らず、最近は“スマホビジネスで一山当てよう”と考える若手起業家は多い。最近、大手検索サイトを運営する企業を辞めて独立した20代の経営者が語る。
「会社員時代は、年収400万円ほどでした。『ポケットギター』という大ヒットしたスマホのアプリの開発者は、数千万円の収入を得たと言われています。今は僕がCEOで、社員は一人もいないけれど、話題になるアプリを作って会社を大きくしたい」
パソコンさえあればいいから開業資金は少なくて済むし、∞ラボのような起業を支援する環境も生まれている。だがその一方で、次々に生まれてくる新たなサービスの中でどう差別化して生き残っていくか。夢へと向かう彼ら若手起業家は今後、その力が問われている。
※SAPIO2011年12月28日号