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故・北杜夫氏 「先生」と呼ばれることを頑なに拒否した理由

今年10月24日に腸閉塞のため亡くなった、歌人・斎藤茂吉の息子であり、『どくとるマンボウ航海記』(新潮文庫)や『楡家の人びと』(新潮文庫)で知られる作家・北杜夫さん(享年84)。

北さんは、39才で躁うつ病を発症し、「躁病になるとてんやわんやの大騒ぎでした」と娘でエッセイストの斎藤由香さんがいう。

「父の母は学習院卒。その影響で、父は病気になる前はとても言葉遣いが丁寧でした。母や私に対しても『ごきげんよう』というような喋り方だったんです。でも躁病になると、母に『喜美子のバカ! 作家の妻として失格だ!』と騒いでいました」

それでも家族は父を受け入れ、大らかに見守った。一方、北さんは天性のユーモア感覚で、自らの病状をエッセーなどで綴った。そんな在りし日の北さんには、ひとつのこだわりがあったという。

「編集者のかたに『先生』と呼ばれると、必ず『北さん』と呼んでくださいとお願いしていました。あるとき、父にその理由を尋ねると『先生と毎日呼ばれていると、偉い人間だと勘違いしてしまう。パパはたいした人間じゃないから、北さんで充分なんだよ』といっていました」(由香さん)

同じ理由から紫綬褒章も辞退。どくとるマンボウは肩書を一切気にせず、人生という航海をまっとうした。

※女性セブン2012年1月1日号

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