携帯電話にスマホが加わり、若者の電車内マナーに批判の声が上がっている。だが、コラムニストの小田嶋隆氏は、むしろ若者よりオヤジやオバちゃんのマナーこそ批判されるべきだと言う。以下、小田嶋氏の主張である。
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思い起こせば、ウォークマンが登場した時、電車内でのイヤホンの音漏れが槍玉に挙がったのは、公共の場でプライベートに没入する若者を当時の大人が気持ち悪がったせいだった。しかし、よく考えれば、シャカシャカ音より、元気なオバちゃんのお喋りのほうがよっぽどうるさい。
今、車内マナーを乱す犯人として責められるのは、なぜ携帯電話やスマホばかりなのか。混んでいる車内で新聞をガサガサ広げながら読んだり、書き物をしているほうがよほど迷惑だと思うのは私だけだろうか。
結局、人は昔から馴染んでいる迷惑には寛大だが、今まで見たことのないもの、新しく直面する迷惑には厳しくなるものなのだ。
むしろ日本社会は、この数十年で公共マナーが格段に向上している。昔は道端で立ち小便をする酔っ払いがよくいたが、今ではもう見かけない。特にマナーに関しては、「最近の若者は……」より「昔のオヤジは……」という愚痴のほうがふさわしいとすら思う。
※SAPIO2011年12月28日号