金正日・北朝鮮総書記の死亡は日本にとっても重要な意味を持っている。日本が警戒しなければならないのは、以前から密かに潜入していた北朝鮮の特殊部隊による破壊活動だ。
「例えば、日本人従業員としてかねてより自衛隊基地に潜入していた北朝鮮側の要員が、設備を破壊すれば、基地は大きな混乱に陥り、作戦に支障を来すことも考えられる。原発に対するテロの可能性も、当然予想される」(防衛省関係者)
原発事故対応を見ても、危機管理の甘い日本では、有事の際にどれほどの被害が出るか、想像すると背筋が寒くなる。こうした北朝鮮有事が起きれば、当然予想されるのが大量の難民だ。北朝鮮情勢研究家の宮田敦司氏の話。
「韓国の統一部が有事をふまえて想定している難民の数は200万~300万人。9月に小舟で漂着した北朝鮮の家族がいましたが、海上ルートを通じて日本にも難民が押し寄せることになる。それが仮に10万人としても、食費だけでも1日1億円はかかる。
収容施設は全く足りないし、受け入れが長期化すれば、仮設住宅の建設や生活費の援助など膨大な財政負担が発生します。さらに難民のなかに工作員が紛れこみ、生物兵器を難民に感染させるなどテロを行なう危険性もある」
その有事は、明日かもしれないし、数年先かもしれない。関西大学経済学部教授の李英和氏は「1年後」に注目すべきだという。
「北朝鮮は今後1年間は、権力基盤を固めるためにも内向きになり、呉越同舟の状態でも金正恩を支えるでしょう。中国も12年秋の党大会でトップが代わり、習近平も当面は内向きにならざるを得ない。しかし、1年後なら話は別です」
※週刊ポスト2012年1月1・6日号