スポーツ

阪急元監督・上田利治氏 「横浜球団の売却には愛がない」

現役を退いて数十年経つ今でも、野球への情熱は燃え上がるばかり。まだまだ若い者には任せられん! そんな球界の重鎮が日本のプロ野球にモノ申す。ここでは阪急ブレーブスの名将・上田利治氏の主張を聞こう。

* * *
今年は横浜のDeNAへの売却が話題となりました。1988年、阪急がオリエント・リース(現オリックス)に売却された時に私は監督をしていたので、球団の複雑な心境はよくわかります。

しかし今回の横浜と阪急のケースの本質は違います。

阪急は経営が苦しい中、親会社が最後までファンや現場のために奮闘し、売却にあたっては、「ブレーブスという名前を残す」「監督は上田のまま」という条件をつけた。新しい球団に対するファンの拒否反応を最小限に抑えるためです。私が売却の事実を知らされた時、小林公平オーナーは「(ファンや選手との)信頼と友情をなくす結果になって申し訳ない」といってくれました。

TBSからは、こうした思いが感じられなかった。経営のお荷物となっている球団が売れればいいとばかりに、現場やファンが置き去りにされていたように見えました。

同じ身売りでも、ブレーブスにいた人間は、阪急に対して恨みはない。今でも「いい球団だった」と振り返れます。むしろ、苦しいながらにフロントはよく現場のことを考えてくれたし、現場としては満足のいく成績を上げられずに申し訳なかったという思いさえあるくらいです。

私は阪急最後の試合で、「ブレーブスはファンの皆さんの物です」と挨拶しましたが、阪急ファンも同じ思いだったのではないか。果たして今回の横浜身売りでは、同じような思いをファンが持ってくれたでしょうか。

新たな企業が球界に参入してくれるのは大いに結構なこと。ただ、何度も親会社が変わるようでは困りますし、現場やファンが置き去りにされてはいけない。球団経営の在り方を今一度、考え直す時期に来ていると思います。

※週刊ポスト2012年1月1・6日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

杖なしでの歩行を目指されている美智子さま(2024年3月、長野県軽井沢町。撮影/JMPA)
美智子さま、「海外渡航はもうおしまい」と決断か 来年度予算から地方訪問同行職員の航空チケット経費が消滅 過去の計128回海外訪問も韓国訪問は叶わず
女性セブン
筒香嘉智が今季を振り返る(撮影/藤岡雅樹)
【筒香嘉智インタビュー】シーズン中に電撃復帰した“ハマの主砲”が喜びを語る「少しは恩返しできたかな」「最後に良い感覚がやっと戻ってきた」
週刊ポスト
球界の盟主が”神の子”に手を差し伸べたワケは(時事通信フォト)
《まさかの巨人入り》阿部監督がマー君に惚れた「2009年WBCのベンチ裏」 幼馴染・坂本勇人との関係は「同じチームにいたくない」
NEWSポストセブン
中居正広
【スクープ】中居正広が女性との間に重大トラブル、巨額の解決金を支払う 重病から復帰後の会食で深刻な問題が発生
女性セブン
今オフのFA市場で一際注目を集めた阪神の大山悠輔(時事通信フォト)
もし、巨人が阪神・大山悠輔を獲得していたら…レジェンドOBが侃々諤々「一体、どこを守らせるつもりだったんですかね?」
NEWSポストセブン
大河ドラマ初出演、初主演の横浜流星
横浜流星、新大河ドラマ『べらぼう』撮影でアクシデント “祠を背負って何度も猛ダッシュ”で…想像を絶する「根性」
女性セブン
ワールドシリーズを制覇し、3度目のMVPを獲得した大谷翔平(写真/AFLO)
【故郷で異変】大谷翔平 「グッズ爆騰」で「小学校時代の直筆手紙」が”閲覧不可”になっていた
NEWSポストセブン
平原容疑者(共同通信)とその自宅
「ドスドス…」「バンバン」土地に戸建て、車は2台持ち…平原政徳容疑者(43・無職)の一軒家から聞こえた“異常な音”「そのころ奥さんもいたのかな」【北九州・中学生死傷】
NEWSポストセブン
“猫好き”が恋の始まりだった中山美穂さん
中山美穂さん、最後の交際相手との“臆病な恋”「別れた時の喪失感が増すから深い交際にならない方が…」互いに心がけた“適度な距離感”
女性セブン
記者会見する林芳正官房長官(時事通信フォト)
《天皇皇后両陛下の前で“着崩れ着物”》林芳正官房長官のX投稿夫婦写真が炎上 石破内閣が「だらし内閣」のイメージを打破するのに立ちはだかる“高い壁”
NEWSポストセブン
自宅で亡くなっているのが見つかった中山美穂さん
「長男は毎晩ぬいぐるみを涙で濡らし…」急逝の中山美穂さん、辻仁成氏との離婚で“母子断絶10年” 残された遺産の行方
NEWSポストセブン
元々母や姉と一緒に住んでいたという
「何しに来たんか!」女子中学生刺殺で逮捕の平原政徳(43・無職)、近隣住民が語った“迷惑系素顔”「リフォームして、お金は持ってるんだろうなと…」 自宅前に置かれていた「200リッターのドラム缶」
NEWSポストセブン