多くの人にとって退職金は、今まで見たことのない金額をまとめて手にする機会となるが、収入が多ければ多いほど、どれだけ税金がかかるかも気になるところ。退職金にかかる税金について、「家計の見直し相談センター」の藤川太氏が解説する。
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定年まで勤め上げればそれなりのまとまった額になる退職金は、税制上、極めて優遇されており、サラリーマンにとってはありがたいお金といえる。実際、どれほど優遇されるのかを見てみよう。
退職金は、まず実際の金額から退職所得控除額が差し引かれ、さらにその半分が退職所得の金額となり、課税される。この退職所得控除額の計算方法は以下の通りだ。
【勤続年数20年以下の場合】
●40万円×勤続年数(80万円に満たない場合は80万円)
【勤続年数20年超の場合】
●800万円+70万円×(勤続年数-20)
たとえば、勤続年数が40年で退職金が2000万円の場合の税金はどうなるか。800万円と、70万円に20(勤続年数から20年を引いた年数)をかけたもの(1400万円)を合わせた、2200万円まで控除が認められるため、退職金2200万円までは税金がかからないのである。
退職金が3000万円だとしても、控除(2200万円)を差し引いた超過分800万円の半分しか課税されない。課税される所得金額が400万円なら20%の税率が適用され、そこから42万7500円の控除額が差し引かれるので、所得税は37万2500円。これに住民税を合わせても70万~80万円といったところだろう。
つまり、一般的に退職金2200万円まではまったく税金がかからないし、それを超えたとしても大きな優遇が得られる。
退職金の平均は上場企業で5000人以上の従業員がいる会社では約2500万円といわれるが、それは日本企業全体の4%に過ぎない。全企業の平均は約1800万円とされているので、そもそもほとんどのサラリーマンは退職金に税金がかからないようになっている。退職金とはそれだけ有利な制度なのだ。
※『サラリーマンのための安心税金読本』(小学館)より