現在、日本では不妊治療の患者数は推計で46万人を超えるといわれている。1983年に国内最初の体外受精による赤ちゃんが誕生。2005年には、全出生児の約1.8%が体外受精で生まれている。 産婦人科専門医の宋美玄さんと、医療ジャーナリストの熊田梨恵さん。医療の最前線にいるふたりが、不妊治療について語り合った。
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熊田:そもそも何をもって不妊というんですか?
宋:WHOは「男女が避妊をしないで性行為を行って、2年以内に妊娠に至れない状態」といってます。体に異常・問題がないカップルが排卵日にセックスして妊娠する確率は約30%なんですわ。意外と低いやんと思われそうですけど、積み重ねて計算していくと2年後には大体90%になるんです。だから2年を目処に見ているわけです。
熊田:なるほど~。大体は2年で子供ができる確率なんですね。不妊のカップルって、どれぐらいいるんですか?
宋:10組に1組は不妊といわれてますね。原因は男女で半々。女性の場合だったら、排卵障害や着床障害、卵管のつまり、精子が子宮にはいりにくくなる頸管因子、卵子の染色体異常などがあります。男性側だと、精子の運動率が悪かったり数が少なかったりする形成障害、精管の通過障害などもあります。また卵子がたまたまその相手の男性の精子の染色体を受け入れないというようなこともありますわ。
熊田:一言に不妊といってもいろんな理由があるんですね。特にふたりの問題だからなおさら複雑…。どんなふうに治療していくんですか?
宋:「妊娠できない」という相談が来ると、まずは排卵しているかどうかを調べるんですわ。排卵していない場合は排卵障害で治療が必要になります。不妊の原因でもっとも多いのはこれで、ホルモンの不調や卵巣機能不全などの問題があります。
排卵してるのに妊娠しない場合は、クラミジアや淋病などの感染症、子宮内膜症などの原因で卵管通過障害が見つかる場合もありますが、これといった原因が見つからないことも多いです。最近は若い子のクラミジア感染が増えているので、ちゃんと検査して治療しておかないと、いざ妊娠したいと思っても「できない!」なんてことになりかねないですよ。
※女性セブン2012年1月5・12日号