いま中国では、都市部で売り出されるマンション価格が3分の1となり、全国の中小企業を支える民間金融の破綻や持ち逃げが相次いでいる。その背景には、どんな問題があるのか。ジャーナリストの富坂聰氏が解説する。
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2011年は中国経済が一つの転換点を迎えたことを象徴する年でもあった。
まず上昇一辺倒だった不動産価格が下落傾向に転じたことだ。未だ上昇を続ける内陸部の影響もあって全体としては数%の下落だが都市部で売り出されるマンション価格は「三分の一になった」といったニュースも聞かれるほどだ。
そして浙江省や広東省では輸出に携わる中小の製造業者の倒産が相次ぎ、民間経済(国有経済に対して)の聖地とされた温州市では民間金融(地下銀行とも呼ばれ、国有銀行が相手にしない全国の中小企業を支えている)の破たんや持ち逃げといった事件が相次ぎ、企業経営者に間には中国に見切りを付けて海外に夜逃げする者も相次いだ。
その深刻な影響は、昨年一年間で温家宝総理が3回も温州を訪れていることでも分かるはずだ。
こうした問題が次々と明らかになった背景には二つの原因が考えられる。一つは不動産バブルに代表される問題ともう一つは中国経済そのものの失速である。
中国経済に起きた変化を人体にたとえるのならばバブルは処方箋のある一過性の病気。一方の景気の減速は、抗うことのできない老化のようなものだ。つまり発展を謳歌できた“思春期”は過ぎたということだ
これを受けて中国ではいま「中所得国の罠だ」、「ルイスの転換点」だといった言葉が溢れているが、これはいずれも中国が新たな発展段階に直面していることを示したものだ。
日本では何もかも「バブル崩壊」の一言で片づけているが、深刻なのはむしろ老化だ。黙っていても投資家に愛された中国が、若さを失ってもその魅力を保てるのか。その真価が問われる一年になることだろう。