肺がん治療の第一選択は手術だ。主流は開胸手術だが、胸に大きな傷が残り、骨を切るため術後の痛みが激しいなど患者の負担が大きかった。それを軽減するものとして、内視鏡を使い肋骨の間に開けた小さな傷から患部にアプローチする胸腔鏡下手術(VATS)が保険承認されている。
傷口が小さく出血も少ないが、内視鏡の画像が2Dのため奥行きがわかりにくい、菜箸のように長くて曲がらない器具を使用するので場所により切除がかなり難しく、担当医師は熟練した技術を要求される。これらを補うものとして登場したのが、手術支援ロボット「ダヴィンチSサージカルシステム」だ。藤田保健衛生大学病院呼吸器外科、須田隆准教授に聞いた。
「ダヴィンチの内視鏡には2つのカメラが内蔵され、両眼で見るように鮮明な3D画像で術野が見えます。またロボットアームには7つの関節があり、必要な場所で曲がるので、リンパ節郭清(切除)や気管支形成など細かい手術も容易にできるようになりました」
日本で最初に手術支援ロボット、ダヴィンチが臨床で使用されたのは、2005年の冠動脈バイパス手術だ。現在は前立腺がん手術などで多く利用されている。
(取材・構成/岩城レイ子)
※週刊ポスト2012年1月13・20日号