中国東北部、吉林省の吉林大学医学部付属のベチューン第一病院では2010年初めに、精子バンクが創設された。2011年6月下旬から4か月間で、22歳から45歳までの健康な男性から精子の提供を呼びかけたところ、83人が応募したものの、合格者はわずかに9人だった(10.8%)。具体的な合格基準は明らかにされていないが、精子は冷凍保存されるため、解凍後の精子の活動の活発度や濃度が重点的に検査されたという。
広東省の夕刊紙「城市晩報」によると、精子提供者の条件は年齢のほか、大学卒業以上の学歴を有し、身長が165センチ以上で、家族に病気の者がいないこと。合格者には同病院で1400元(約1万6800円)相当の治療を受けられるという
吉林省の精子バンクとしては同病院が初めてで、今後、不妊治療に悩む女性に提供されることになる。
ところで、中国ではこのような精子バンクは同病院が13番目となる。他の省の精子バンクでは、精子提供者に6500元(7万8000円)の謝礼を出すところもある。これは、慢性的に優良な精子が不足しているためだ。そうした病院では、精子を求める女性が殺到し、不妊治療を受けるには100人から200人待ちの状態が続いているという。
この背景には中国政府が採用している一人っ子政策がある。すでに一人っ子同士の結婚では第二子まで認められているものの、不妊に悩む若い夫婦にとって「子供は宝物」だけに、少しでも条件がよい精子を求めるというわけだ。
ちなみに、不妊治療で子供を産むまでに「場合によっては1万元(約12万円)が必要」(広東省の医師)だというほどで、中国では「精子ビジネス」は今後の成長株といえそうだ。