今年2月に公開される映画『ピラミッド5000年の嘘』では、これまで世界中で常識であると信じられてきた数々の説が覆されている。そこで、ピラミッドに関する“常識の嘘”を2つ紹介しよう。
【(常識1)「大ピラミッドはクフ王の墓」→(真実)「『王の墓』という証拠は何もない」】
エジプト・ギザにある大ピラミッドは、紀元前2540年頃にエジプト第4王朝を治めたファラオ(皇帝)であるクフ王の墓として建造された──。これは歴史教科書にも載っている定説である。
長く語られてきたこの“常識”の源は、今から2000年ほど前、歴史家ヘロドトスが大著『歴史』の中で、「大ピラミッドは、10万人の奴隷が20年間働いて造った、クフという残忍なファラオの墓である」と論じていることによるもの。
しかし、大ピラミッドの建設時期はヘロドトスの時代からさらに2000年以上遡り、その信頼性は乏しい。これまで科学的な根拠となるものも発見されておらず、クフ王の墓というのは一つの仮説にすぎないのである。
大ピラミッドの「王の間」には石棺らしきものが設置されているが、棺にあるべき蓋はなく、クフ王のミイラも見つかっていない。もちろん、盗掘に遭った可能性もあるが、初めからなかったという可能性も否定できないだろう。
現代では、ギザの大ピラミッドは、たびたび起こるナイル川の氾濫で、一時的に職を失った農民のための失業対策であったという説も有力になっているほどだ。
そもそも、ピラミッドが王の墓ということ自体、建築学や、物理学などを用いた最新の研究からは疑問符がつく。ギザの大ピラミッドに限らず、他のピラミッドからも、完全なミイラが出た例はない。ピラミッドが、王の墓であるという科学的根拠は何もないのである。
【(常識2)「建設期間は20年」→(真実)「どう考えても建設に数百年はかかってしまう」】
ギザの大ピラミッドは、高さ146m(現在139m)、底面の1辺230mという巨大な建造物で、平均2.5トンもの巨石を200万個以上積み上げて建造されている。こんな巨大建造物がたった20年で建設されたというのが今までの常識だった。この常識もまた、前述した、歴史家ヘロドトスの著書『歴史』を根拠にしているだけ。
この常識が成立するためには、仮に1日の半分の12時間を作業時間とし、365日、20年間作業をして石を200万個運んだと考えると、2分30秒に1個のペースで数トンもの石を積まなければならないことになる。しかも、積み上がっていくに従い、石を運び上げる位置は高くなり、最終的には100mを超える。こんなことが果たして可能なのだろうか。
メキシコにあるテオティワカン遺跡は紀元前2世紀から6世紀に発展した巨大都市の遺跡だが、ここにある太陽のピラミッドは高さが65mで、ギザの大ピラミッドのおよそ半分ほど。それでも建設には150年かかったとされている。とすれば、それより前の時代に、倍の高さに建設されたギザのピラミッドは数百年はかかったと考えなければならない。
さらには、次のような話も。1960年代、エジプトにあるアブ・シンベル神殿をダム建設による水没から守るために解体作業が行なわれた。重機を使い5年がかりで解体されたのはたった2200のブロックだった。現代の技術をもってしてもピラミッドを20年で建設するのが不可能なことは一目瞭然なのである。
※週刊ポスト2012年1月27日号