日本の自動車メーカーが再びスポーツカーの販売に力を入れている。日本のスポーツカーは成功するのか? そして、世界で通用するのか? 大前研一氏が解説する。
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東京モーターショーでトヨタが今春発売予定の小型スポーツカー「86」を、デトロイトモーターショーでホンダがかつての高性能スポーツカーの後継となるハイブリッドの「アキュラNSX」、トヨタもハイブリッドの高級スポーツカー「LF-LC」を発表した。
しかし、もはや日本の消費者はスポーツカーを求めておらず、戦略ミスを犯している。未だに高級スポーツカーを購入しているのは、お金を車に注ぎ込むことによって自分の身分を差別化したい金持ちであり、そのマーケットは昔に比べると非常に小さくなっている。
しかも、そのセグメントはホンダがいくら高性能の「NSX」を出してもポルシェにはかなわないし、さらに上はフェラーリと昔から序列が決まっている。
フェラーリの場合は人気のある限定生産車で儲けている。発売の2~3年前にコンセプトを発表し、予約したお客から先に代金を取ってしまう。つまり、開発資金はすべてお客の前払金で賄っているのだ。
したがって開発リスクがほとんどないので、極めて贅沢な車が出来上がり、中古車になっても値段が全く下がらない。ビンテージになると、売り出し価格の3~4倍になる限定生産車もあるほどだ。国産スポーツカーとは「格」が違うのである。
※週刊ポスト2012年2月3日号