ライフ

放射能から和歌山に避難家族 築100年の家で野菜作り藍染売る

東北各県で避難を余儀なくされ、仮設住宅や親類宅などで年を越した被災者は約30万人。さらに、原発事故を受け、関東などから関西や沖縄といった地域へと子供を連れて自主避難した人も少なくない。そうした母親たちの苦しみは、今も続いている。フリーライターの清水典之氏が「原発難民ママ」たちの今を追った。

* * *
被災地から関東へ自主避難してくる人々がいる一方で、首都圏から西日本へ避難する母子も多い。

シングルマザーの森下里美さん(44歳)は、事故の後、埼玉県飯能市の自宅から、10歳の娘と6歳の息子とともに静岡県の実家に身を寄せた。

「実家に逃げたはいいのですが、その実家が浜岡原発から8kmで、余震が続いたので怖くなり、さらに西に向かってあてもなく移動しました」

母子は2011年5月、和歌山の山間部にある過疎の村にたどり着いた。今はプレハブの住宅を借りて生活している。森下さんは言う。

「和歌山では足もみマッサージなどの仕事をしています。収入は少ないですが、近所の方たちが親切で、家に大根や白菜など野菜や果物を持ってきてくださるので、あたたかい気持ちで暮らしていけます」

同じく飯能市から和歌山県に自主避難したのが柴田由美さん(仮名・35歳)だ。とび職の夫と2歳の娘と一緒に、事故直後に家を出た。現在は那智勝浦町に築100年ほどの家を無償で借り、畑で野菜を作り、藍染め製品を販売しながら生活している。

「最初の2~3か月、夫の仕事がなく本当に悩みました。今は夫は3つの仕事をかけもちしていますが、それでも以前の収入の半分から3分の2ほど。夫はここでの生活が気に入ったようですが、私は両親を関東に残しているのでいずれは戻りたい。ここに永住すると決断できないというのが本心です」

飯能市で借りていた家は家賃の負担が大きいので、すでに引き払ってしまった。戻りたくても戻れないというジレンマがある。

※SAPIO2012年2月1・8日号

関連記事

トピックス

屋根工事の足場。普通に生活していると屋根の上は直接、見られない。リフォーム詐欺にとっても狙いめ(写真提供/イメージマート)
《摘発相次ぐリフォーム詐欺》「おたくの屋根、危険ですよ」 作業着姿の男がしつこく屋根のリフォームをすすめたが玄関で住人に会ったとたんに帰った理由
NEWSポストセブン
人が多く行き交うターミナル駅とその周辺は「ぶつかり男」が出現する(写真提供/イメージマート)
《生態に意外な変化》混雑した駅などに出没する「ぶつかり男」が減少? インバウンドの女性客にぶつかるも逆に詰め寄られ、あわあわしながら去っていく目撃談も
NEWSポストセブン
現在はニューヨークで生活を送る眞子さん
「サイズ選びにはちょっと違和感が…」小室眞子さん、渡米前後のファッションに大きな変化“ゆったりすぎるコート”を選んだ心変わり
NEWSポストセブン
大の里、大谷
来場所綱取りの大関・大の里は「角界の大谷翔平」か やくみつる氏が説く「共通点は慎重で卒がないインタビュー。面白くないが、それでいい」
NEWSポストセブン
悠仁さまの通学手段はどうなるのか(時事通信フォト)
《悠仁さまが筑波大学に入学》宮内庁が購入予定の新公用車について「悠仁親王殿下の御用に供するためのものではありません」と全否定する事情
週刊ポスト
すき家がネズミ混入を認める(左・時事通信フォト、右・Instagramより 写真は当該の店舗ではありません)
味噌汁混入のネズミは「加熱されていない」とすき家が発表 カタラーゼ検査で調査 「ネズミは熱に敏感」とも説明
NEWSポストセブン
男性キャディの不倫相手のひとりとして報じられた川崎春花(時事通信フォト)
“トリプルボギー不倫”の女子プロ2人が並んで映ったポスターで関係者ザワザワ…「気が気じゃない」事態に
NEWSポストセブン
CM界でも特大ホームラン連発の大谷翔平
【CM界でも圧倒的な存在感の大谷翔平】「愛妻家」のイメージで安定感もアップ、家庭用品やベビー用品のCM出演にも期待
女性セブン
堀田陸容疑者(写真提供/うさぎ写真家uta)
《ウサギの島・虐殺公判》口に約7cmのハサミを挿入、「ポキ」と骨が折れる音も…25歳・虐待男のスマホに残っていた「残忍すぎる動画の中身」
NEWSポストセブン
船体の色と合わせて、ブルーのスーツで進水式に臨まれた(2025年3月、神奈川県横浜市 写真/JMPA)
愛子さま 海外のプリンセスたちからオファー殺到のなか、日本赤十字社で「渾身の初仕事」が完了 担当する情報誌が発行される
女性セブン
昨年不倫問題が報じられた柏原明日架(時事通信フォト)
【トリプルボギー不倫だけじゃない】不倫騒動相次ぐ女子ゴルフ 接点は「プロアマ」、ランキング下位選手にとってはスポンサーに自分を売り込む貴重な機会の側面も
週刊ポスト
ドバイの路上で重傷を負った状態で発見されたウクライナ国籍のインフルエンサーであるマリア・コバルチュク(20)さん
《ドバイの路上で脊椎が折れて血まみれで…》行方不明のウクライナ美女インフルエンサー(20)が発見、“危なすぎる人身売買パーティー”に参加か
NEWSポストセブン