年明けの1月2日、福島市には432メガベクレル/平方キロメートルという、直近の観測量の実に30倍のセシウムが降った。さらに、いったんは落ち着きを見せたと思われた15日にも再び200メガベクレル/平方キロメートルに近い値が観測されたのである。
いずれの数値も、福島県原子力センター福島支所で観測されたものだ。同支所ではセシウムの降下量を毎日観測しているが、数値が公表されるのは2日後。急増した1月2日、15日についても同様に事後公表だった。
そのうえ、公表といっても福島県庁のホームページ上のことであり、一部の新聞やテレビが報じたのは、さらにその数日後のこと。子供の健康への影響を不安に感じながら空間線量を見守ってきた地元の母親たちにとって、この事実はまさに青天の霹靂だった。
観測されたセシウムの数値について、観測を所管する文部科学省では、「安全性については問題ない」(原子力災害対策支援本部)としているが、琉球大学名誉教授の矢ヶ崎克馬さん(物理学)はこういう。
「432メガベクレル/平方キロメートルは、いいかえると432ベクレル/平方メートルです。例えば、学校給食の基準値をめぐって議論されていたのが1kg当たり40ベクレルだったことを考えると、今回検出された値が無視できない数値であることは明らかです」
空間線量や食物と違い、放射性物質の降下量に基準値は設けられていないものの、検出された値について、中部大学教授の武田邦彦さん(資源材料工学)は、次のように指摘する。
「1月2日の432メガベクレル/平方キロメートルといえば、量からいいますとかなり危険な数値です。例えば、厚生労働省がまとめた一般食品の新基準値によれば、1kgあたり100ベクレルのセシウムが検出されると出荷停止となるわけです。ですから福島の畑、1平方メートルに1玉1kgのキャベツが4つ植えられていたとすると、たった1日でそれに匹敵する量のセシウムを被っちゃったことになるわけです。こんな日が数日続けば、こうした農作物は当然、出荷できなくなってしまいます」
それほどの量のセシウムが空中を舞ったということなのだ。いくら食品中の放射線に気をつけていても、子供たちが知らずに吸い込んでいる可能性もあるだろう。子供たちの内部被曝の恐れについて、武田さんは、
「お子さんは放射線に関する感度がもともと大人の3倍です。しかも大人より頭が低いところにあるので、その分、舞い上がった放射性物質をたくさん吸ってしまう。結果、大人の10倍近い危険にさらされていると考えるべきです」
と危惧する。
※女性セブン2012年2月9日号