大局的に世界経済を見渡せば、「人件費の高い日本、安い新興国」という図式も変わろうとしている。
国内回帰を強めるアイリスオーヤマの人事部長兼広報室マネージャーの倉茂基一氏がいう。
「現在、中国は急激な人件費の高騰と人手不足に陥っています。一人っ子政策の反動で、今まで都会に出稼ぎに来ていた若者たちが内陸部に帰り始めており、毎年20%のペースで人件費が高騰している。
かつて、日本と中国の1人あたりの人件費は20倍の開きがあったが、このままいけば、当社では物流コストも含めて4~5年先には中国生産のメリットは無くなると考えています」
中国に限ったことではない。日本政策金融公庫が昨年8~9月、海外現地法人を持つ中小企業にアンケートを実施したところ、直面している課題のトップは「労務費の上昇」の約49%で、「ワーカーの確保」、「管理者の確保」が続く。アンケートに回答した企業全体の人件費の上昇率は17.6%で、特にベトナムは1年前に比べて24.3%も上昇している。
いずれ「アジアで作れば安く上がる」という従来の常識は覆される。日本HPがラインの見直しで製造効率をアップさせたように、各企業の努力によっては人件費の差が埋まる時期はもっと早まる可能性もある。
※週刊ポスト2012年2月3日号