「原発に頼らない安心できる社会」を目指す城南信用金庫(東京・品川区)は、1月1日午前0時、東京電力との契約を打ち切り、PPS(特定規模電気事業者)の最大手であるエネット(東京・港区)から電気を購入し始めた。「脱原発実現への説得力を高めるために、この動きを社会に広めていきたい」と語る吉原毅理事長に“脱東電”の試みをジャーナリストの小泉深氏が聞いた。
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――「電力会社を切り替える」というのは、実際にはどういうことですか。
吉原:特定規模電気事業者、われわれの場合はエネットに連絡をし、前年度の電力使用状況などの書類を提出し、必要に応じて調査に立ち会い、東京電力に解約届けを提出するというのが基本的な流れです。
当金庫では、支店ごとに前年のデータや配電盤を調べるのに時間がかかり、最終的な手続き完了まで3か月ほどを要しました。
とはいえ、実際の細かい調査はエネット側がやってくれますので、新たな機器を設置する必要もなく、いたって簡単な作業だったという印象です(編集部注/設備や契約している電力会社のエリアによっては計量機器交換工事などが必要な場合がある)。
――電力を使用するに際しては、何か不都合な点はありませんか。
吉原:東電からPPSに切り替えたとしても、いわば電気代の支払先が変わるだけで、使い勝手は何も変わりませんよ。照明もコンピュータも以前と変わらずに使えます。
導入後、パソコンで30分ごとの使用電力量を把握できるサービスが無料で利用できるようになり、むしろ利便性は向上します。電力を“見える化”することで、節電への意識が今までよりさらに高まるはずです。
今回は、当金庫の85ある支店のうち、77店を切り替えました。8店が切り替えできなかったのは、建物自体の電力が高圧(6000V)供給を受けているというPPSの利用条件を満たさなかったことや、テナントとして入居しているビルの所有者の意向などが理由です。
※SAPIO2012年2月1・8日号